TFZ x Angelears Athena

こんにちは。今回は 「TFZ x Angelears Athena」です。AliExpressのセーラ「Angelears」とのコラボで、現在は新モデルの販売を終了している「TFZ(The Fragrant Zither)」ブランドを限定生産で復活させたモデルになります。3月16日より「ゴールド」「シルバー」の2色でそれぞれ500個、合計1000個限定で販売開始となります。

■ 製品概要と購入方法について

「TFZ(The Fragrant Zither)」は2016年の登場以来、老舗の中華イヤホンブランドのひとつとして日本でも多くのファンを獲得していました。しかし2022年に「SUPERTFZ」ブランドがスタートし、以降は「SUPERTFZ」に移行。しかし、これらの製品も2024年でリリースは止まっています。現在「SUPERTFZ」ブランドを所有するメーカーは2025年から新たに「EarAcoustic Audio」をスタートさせており、全く新しいランナップで生まれ変わっています。
→ 過去記事(一覧): TFZ製品のレビュー、まとめ、変遷(チャート図)など

TFZ x Angelears Athenaというわけで「SUPERTFZ」はともかく、前身の「TFZ」ブランドは一度完全に終了をしていますが、2025年、Angelearsとのコラボプロジェクトとして「限定復活」しました。製品説明では今回の「TFZ x Angelears Athena」はこのプロジェクトの「最初の製品」と記載されており、人気次第では今後も継続して製品が登場する可能性もあります。

TFZ x Angelears Athena」は「TFZ」らしい音響特性を踏襲しつつ、新機能と最先端のチューニングにより新たなイヤホンとして製品化されました。そのチューニングには有限要素解析(FEA)や音響シミュレーションなどの手法を駆使し、試行を繰り返し最適化を行っています。

搭載される「TFZ-X1」ダイナミックドライバーは「DUAL PATH」音響チャンバーを採用。「TFZ」は2016年の最初の製品からシングルダイナミック構成にこだわり、同社の代名詞とも言える「デュアル磁気回路(Dual-Magnetic Circuit Two Divided-Frequency)」という独自の構造を採用してきました。これはシングルドライバー構成のメリットを活かしつつ「2つのチャンバー」と「2つのボイスコイル」をひとつのドライバー内に搭載した構造することで、二重化された磁気回路がそれぞれ超高域・高域と中域・低域を担当し、通常より広いダイナミックレンジと分離性を実現しています。「TFZ-X1」はこの伝統的なTFZのアプローチを踏襲した最新のダイナミックドライバーです。
TFZ x Angelears AthenaTFZ x Angelears Athena
振動板にはナノレベルのベリリウムコート振動板を採用。軽量かつ高剛性の特徴を持ち、迅速なレスポンス、クリアで正確なサウンドを実現しています。高音域では繊細かつ明るいパフォーマンスを発揮し、中音域はディテールが豊かで、低音域は深みと弾力性に優れています。
また「TFZ x Angelears Athena」が搭載する「TFZ-X1」ダイナミックドライバーは、ベリリウムコート振動板に加え、N52高磁束マグネットとカスタムコイルを備え、振動板を安定して駆動させます。少ないパワーでも高品質のサウンドを生み出し、高周波の伸びの向上、透明で広い音場を提供します。
TFZ x Angelears AthenaTFZ x Angelears Athena
またデュアル磁気回路により誘導磁束が強化され、振動板のレスポンスが向上することで、正確かつ深みがあり力強い低音を生み出します。EDMやロック等の低音が豊かな音楽の強さとリズムを明瞭かつ正確に再現します。そしてデュアルチャンバー構造により音の伝播経路が最適化され、定在波と回折の問題を軽減し内部干渉と歪みを最小限に抑制します。これにより分離性が向上し様々な楽器の微妙な変化に焦点を合わせることができます。「TFZ x Angelears Athena」が搭載する「TFZ-X1」ダイナミックドライバーはこれらの相乗効果によりより純粋で自然なサウンドパフォーマンスを実現します。
TFZ x Angelears AthenaTFZ x Angelears Athena
TFZ x Angelears Athena」のフェイスプレートはパレットでブレンドしたレジンアートにより職人がハンドメイドで作成しています。中央には精密CNC加工されたメタルプレートを配置。「ゴールド」カラーと、「シルバー」カラーの2種類のモデルを用意しています。

TFZ x Angelears Athena」は2025年3月16日よりオーダー受付を開始。
「ゴールド」および「シルバー」がそれぞれ500個、合計1000個限定での販売となります。
通常販売価格139ドル。クーポンコード「ATHENA99」にて初回販売分は99ドルで販売されます。
また初回得点で「TFZブレスレット」および「Angelears Curacaoヘッドホンケーブル」がプレゼントされるそうです。

免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Angelears Audio Store より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

というわけでかつてはTFZ大好きおじさんを長年やってた私ですが(^^;)、数年前の私以外誰もレビューしてないんじゃないか(つか買ってない)みたいなTFZ末期やSUPERTFZ初期を経験していると、今回の復活は隔世の感がありますね。大変嬉しい限りです。というわけで「TFZ x Angelears Athena」のパッケージは正方形のシンプルなデザインながら高級感のあるシルバーカラーのボックス。
TFZ x Angelears AthenaTFZ x Angelears Athena

パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピースが2種類(それぞれS/M/Lサイズ)、ポーチ、説明書。私のところには「シルバー」フェイスのモデルが届いています。
TFZ x Angelears AthenaTFZ x Angelears Athena

本体はかつての「TFZ SERIES」ラインや「TFZ KING」などをイメージさせる、伝統的なシルエットを踏襲しています。しかし、既存のTFZ製品ではこのシェル形状のタイプではハウジング部とおなじプラスチック製か、上位機種は金属製のフェイスパネルを採用しており、「TFZ x Angelears Athena」のようなレジン製フェイスパネル採用した製品は実は初めて(異なるシェル形状のタイプは除く)。また左右ともアテナのロゴを採用しているのも初めてです。これまで有りそうで無かったデザインと質感というのがコラボモデルとして復活した「TFZ x Angelears Athena」の立ち位置を反映していてとても興味深いですね。
TFZ x Angelears AthenaTFZ x Angelears Athena
新しいフェイスプレートは流し込みによるハンドメイドで非常に雰囲気があり、実際の外観も予想以上に高級感があります。濃いブルーのハウジングとあわせてとても美しいし仕上がりです。
また以前のTFZ同様に少し大きめのシェル形状ながら、比較的フィットしやすいデザインで装着感もまずまず良好です。イヤーピースが一般的なタイプと開口部の大きいタイプの2種類が各サイズ付属する点も以前と同じですね。私は例によって「TRN T-Eartips」に好感しています。
TFZ x Angelears AthenaTFZ x Angelears Athena
ケーブルは0.78mmの2pin仕様で、従来のTFZと同様のカバー形状を踏襲しています。TFZタイプのケーブルはNICEHCK NX7シリーズ等でも採用されていますが、通常の中華2pinまたはCIEM 2pinケーブルで問題なく利用できるためリケーブルでも困ることはないでしょう。付属のケーブルはしっかりした外観の4芯撚り線タイプで、本体と合せた濃いブルーの被膜がとても綺麗です。また取り回しも良好です。


■ サウンドインプレッション

TFZ x Angelears AthenaTFZ x Angelears Athena」の音質傾向は往年のTFZらしさを感じさせるV字傾向でバランスの良いドンシャリサウンド。しっかり伸びる明瞭な高域と深く沈みキレと力強さのある低域は改めて非常に楽しく気持ちよさがあります。かつての「TFZ EXCLUSIVE KING」をはじめて聴いたときの「どこまでも伸びていくような高域」の感覚や、強い低域で臨場感を演出しつつも非常にキレの良い音で明確に分離する感じなど、TFZのなかでも最もTFZらしい(?)、第2世代(「EXCLUSIVE KING」を筆頭に「SERIES4」や「SERIES2」など)的なバランス感がとにかく楽しいですね。
同時に空間表現や質感は確実に向上しており、第3世代(「No.3」など)以降で、様々な派生ドライバーを生み出した課程での技術的な進化をしっかり反映している印象もあります。また過去のTFZではほぼ採用してなかったベリリウムコート振動板の新しいドライバーは歪みを抑え明瞭な音を鳴らしつつ、全体としては寒色系のサウンドながら中低域にかけて温かみも感じる印象で、イマドキといえるチューニングも実感します。単なる懐古主義に走らず、ちゃんと最新の音でブラッシュアップしている点が好感できます。
※かつてのTFZの「世代」については過去記事を参照ください。

TFZ x Angelears Athenaちなみに、「TFZ x Angelears Athena」はインピーダンス32Ω、感度105dB/mWとどちらかというと鳴らしにくい仕様で、過去のTFZでは時代的にほとんど採用されてなかったベリリウムコート振動板という性格もあって、ゲイン設定や再生環境よって印象は多少変化します。より自然で気持ちよく再生するためにはある程度駆動力のあるDAPやアンプでの利用が推奨されるでしょう。過去のTFZと異なり、「TFZ x Angelears Athena」の付属ケーブルは情報量も豊かで音色傾向としても非常にバランスの良い組み合わせですが(かつてのTFZは本気出すのはリケーブルしてから、みたいなところがありましたね)、小型のオーディオアダプターなどの場合はバランス化するほうが良い印象となる場合もあるかもしれませんね。

TFZ x Angelears Athena」の高域はTFZらしい明瞭で伸びのある音を鳴らします。ベリリウムコート振動板の採用により刺激のある音もある程度コントロールさせつつ、同時に硬質感のあるサウンド実感します。しっかり鳴らすことで見通しが良く、適度な鋭さと煌めきを持った音を楽しめます。高高域はかつてのTFZのような見通しの良いどこまでも伸びるような直線的な感覚を持ちつつも、さらに歪みを抑え、鋭い音は鋭く、煌びやかな音はキラキラと鳴らしつつ耳への負担は軽減してる点はイマドキの聴きやすさも感じさせる音作りです。

TFZ x Angelears Athena中音域は、はっきりしたV字傾向のため曲によっては多少凹みます。しかし高域同様に見通しが良く、しっかりと駆動力のある環境で鳴らすことで、寒色系のややメリハリが強い印象にはなるものの、ボーカル、演奏とも非常に綺麗な音像表現を実感出来ます。女性ボーカルやピアノの高音など中高域はより強めの主張があり高域まで抜けが良くスッキリと伸びていきます。最近の主流ともいえるU字傾向のイヤホンでは中高域付近にアクセントがありボーカル域を前傾させていますが、ドンシャリ傾向の強い「TFZ x Angelears Athena」ではミッドはより深く凹み、そこから中高域への立ち上がりはより急激なカーブを描くことで、さらに強いメリハリを感じるようです。これに対して中低域付近はややドライな印象となり、低域との分離性を高めています。それでもベリリウムコート振動板の影響もあってか、男性ボーカルなどは適度な温かみを持つことで淡泊になりすぎず、雰囲気のある質感を高めています。
全体としての解像感は高く、キレの良い音像表現で分離も良い印象。そのため自然な広がりをもつ音場感と、V字傾向らしい前後のレイヤー感により、非常に気持ちよい臨場感を楽しめます。

TFZ x Angelears Athena低域は量感としてはニュートラルに近く「低域モリモリ」という感じではないものの、やはり「TFZらしさ」を感じさせるキレのある印象で、力強く重量感のある音で再生されます。それでも第3世代以降、特に後期から末期に近い「KING PRO」のバランスを踏襲している世代と比較すると十分に量感はあり、やはりハイゲインでしっかり駆動させることで往年の「EXCLUSIVE KING」のような豊かな臨場感と楽しさを実感出来るでしょう。ミッドベースは直線的でキレとスピード感があり、中高域と明瞭に分離し、重低音は深く沈み、響きと重量感もありますが、同時にドライな印象もあり、過度に誇張しない感じも自然で良いですね。


■ まとめ

というわけで、「TFZ x Angelears Athena」は「TFZらしさ」と「最新の音作り」の融合により個人的には非常に満足のいく仕上がりだと感じました。またフェイスプレートなどの質感も良く、しっかりしたケーブルと合せて外観も高級感があります。
もっとも敢えてウィークポイントを挙げるとするなら「往年のTFZを最新のサウンドで復活させた」というコンセプトそのものであり、最近のニュートラル方向のフラットまたはU字傾向のイヤホンに慣れている多くのユーザーにとっては必ずしも好まれるとは限らないという点を挙げる必要があるでしょう。特に高域の鳴り方や、中音域の凹み方は最近のトレンドで言うと多少なりと好みが分かれそうです。それでもV字傾向、ドンシャリ傾向のイヤホンでしか得られないリスニング的な楽しさがあり、しっかりした再生環境で楽しむことができれば、多くの方に満足度の高いイヤホンだと思います。
興味のある方は、限定数のある製品ですので発売に合せて掴んでみるのもお勧めですよ(^^)。