Shanling ME600

こんにちは。今回は購入済み未レビューのイヤホンを紹介する「棚からレビュー」です。
今回のネタは「Shanling ME600」です。購入したのは昨年末くらいだったような。ミドルグレードの3BA+2DDのハイブリッドモデルです。 通常価格は5万円台ですが、AliExpressなどでは結構値下がりしており、セール時はさらに購入しやすくなるようですので、このタイミングでレビューを仕上げてみました。

■ 製品概要と購入方法について

Shanling ME600」は2024年にリリースされた、数々の高音質DAP(デジタルオーディオプレーヤー)やオーディオアダプター製品で日本でもお馴染みになっているオーディオメーカー「Shanling」のミドルグレードのハイブリッドモデルです。

2基のダイナミックドライバーと3基のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーを搭載し、3WayのPBCクロスオーバーとデュアル・ヘルムホルツレゾネイターによるチューブレスデザインを採用しています。また近代建築からインスピレーションを得た新たな流体系のシェルデザインを採用し、精密に削り出されたアルミニウム製フェイスプレートにアルマイト処理と金メッキを施したステンレススチールによるキャビティにより優れた制振性能と重厚な質感を演出ししてます。
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Shanling ME600」のドライバーは低域用に2基の6mm バイオ振動板ダイナミックドライバーを搭載し、中音域用のカスタム2BAユニット、高域用のカスタムBAツィーターユニットを組み合わせた3Way、3BA+2DDハイブリッド構成を採用しています。ダイナミックドライバーはN48ネオジム磁石と高純度銅ボイスコイルを採用。各BAは専任エンジニアによりカスタマイズされています。これらのドライバーはデュアル・ヘルムホルツレゾネイターを採用したチューブレス設計で配置されダイレクトで明瞭なサウンド実現。専用設計のPCBクロスオーバーネットワークにより最適にチューニングされています。
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さらに「Shanling ME600」では交換可能な3種類のチューニングノズルが付属。標準でバランスタイプに「ブラック」ノズルに対し、「レッド」は低域強調と滑らかな高域、「ホワイト」は透明度が向上し、エネルギッシュなサウンドにチューニングされます。
ケーブルは単結晶銅銀メッキ線の4芯リッツ線ケーブルを付属。コネクタはMMCXを採用し、プラグは3.5mmと4.4mmで交換可能です。
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Shanling ME600」の価格は329ドル、国内正規品は52,470円前後で販売されています。
なお発売からしばらく経っているため掲載時点でAliExpressのShanling Offical Storeでは25% OFF(246ドル前後)、ショップによってはそれ以下で購入できるようですね(もちろん国内保証はありません)。
AliExpress(Shanling Offical Store): Shanling ME600

Amazon.co.jp(国内正規品): Shanling ME600


免責事項:
本レビューは個人的に製品を購入し掲載している「購入者レビュー」となります。
本レビューに対してそれ以外の金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

Shanling ME600」のパッケージはシンプルな黒箱タイプのデザイン。ミドルグレード製品と言うこともあり大きめのボックスです。
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パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、交換プラグ、チューニングノズル、イヤーピース(シリコンタイプ4種類、それぞれS/M/Lサイズ、ウレタンタイプ2ペア)、クリーニングブラシ、ケースなど。
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本体は特徴的なスリット状のデザインのアルミ製パネルとシャンパンゴールドのステンレススチール製のハウジングで構成された金属製シェル。フェイスサイズは結構大きめで耳を覆うような形状です。
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厚みは抑えらており、ステンレス製ハウジングのため重量はそれなりにありますが、耳穴全体でホールドするような装着感でイヤーピースを合せれば装着性は快適です。耳穴への負担が分散されるため長時間の利用でも快適な印象。
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同じShanlingのミドルグレード製品でも軽量コンパクトなウッドハウジングの「MG600」と比べると親子くらいサイズの違いがありますね(^^;)。製品ごとにアプローチの違いがはっきりしているのが興味深いですね。
ハウジング部分に2基のダイナミックドライバーと2BAユニットと、低域用と中音域用でそれぞれ2基ずつのドライバーを配置することでフェイスサイズが大型のデザインになっていますが、高域用はツィーターBAユニットをステムノズルに配置しており、ほかの音域寄り耳穴に近い位置で鳴ることで1基のユニットでバランスを取っている構造になっています。
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ステム部の先端は交換式のフィルターノズルになっており、内部のフィルター材の違いにより3種類のチューニングで利用できます。フィルターごとのf値を見ると中低域~低域は変わらず、中高域~高域に変化を与えるタイプであることがわかります。実は「ブラック」の「バランス」はV字傾向という意味で、高域が最も強く(グラフではブルー)、「ホワイト」の「クリア」タイプが中間タイプ(グラフではグリーン)であることがわかります。
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ケーブルはMMCXコネクタを採用した単結晶銅銀メッキ線の4芯リッツ線ケーブルが付属。プラグはL字タイプで3.5mmと4.4mmを交換可能です。ブロンズカラーの撚り線タイプの適度な太さのケーブルで取り回しは良い印象です。


■ サウンドインプレッション

というわけで「Shanling ME600」です。5万円台の通常価格だとちょっと購入しにくい感じのイヤホンですが、中古相場も3万円台後半で落ち着いており、AliExpressでの購入に躊躇がなければオフィシャルストアでも中古相場と同程度の価格で購入できます。セール時にはさらに安くなるため実は結構狙い目なのでは、と思い「棚からレビュー」で仕上げてみました(^^;)。

Shanling ME600閑話休題、「Shanling ME600」の音質傾向はバランスの良いドンシャリから弱ドンシャリの印象。ボーカル域は適度に温かみがあり低域は若干ブーストされて心地よい存在感があります。並列稼働する2基のダイナミックドライバーによって得られる低域は非常に深く豊かさがあり、スピード感と締まりのあるミッドベースに対して心地よい響きのある重低音があり、中高域を下支えし、空間表現を演出ししてます。中音域はV字傾向らしい自然な定位で見通しは良く、心地よい空間表現とボーカル域と演奏のバランスで楽しめます。
全体としてミドルグレードらしい質の高さを感じるサウンドですが、高域の表現については、明瞭でスッキリした印象があるもののツィーターによって補完しているらしいピークが感じられ、他の音域に比べると若干の意識した強調感があります。

製品説明によるとクロスオーバー処理は専用PCB基板による電子制御(抵抗等による出力調整)でチューブレス設計を特徴としています。また低域及び中音域用のドライバーがハウジング部の設置に対して、高域用BAはステムノズルの耳穴に非常に近い位置で設置されており、ノズルフィルターで調整する仕様になっています。この配置からもステム部のBAは文字通りツィーターとして稼働しており、ピークを中心に高域を補完している鳴り方をしていると想像できます。
Shanling ME6003種類のフィルターノズルはこの高域の表現を調整しており、「レッド」フィルターではほぼピークを抑えることで全体としては中低域寄りでニュートラル方向の印象になります。逆に「ホワイト」のフィルターはハイハットなどの高域の印象を感じやすい帯域のピークが特に強調された印象になります。そして「ブラック」のフィルターは高域全体の出力が増し、全体としてバランス型、つまりV字傾向が強調されます。個人的には正直なところ3種類とも一長一短という印象です。そのため以降のレビューは「ブラック」フィルターをベースに記載します。実際には特徴のあるケーブルへのリケーブルとフィルターの組み合わせで追い込んでみるのも良いと思います。

Shanling ME600」の高域はBAらしい硬質感のある明瞭な音で鳴ります。前述の通り全体を通すと若干のウィークポイントになるかもしれません。ハイハット等のシンバル音とさらに高高域の煌めきを感じやすい音域がツィーターにより補完されており、やや金属質な質感があります。この辺をスッキリした明瞭感と捉えるか人工的に捉えるかで印象が変わりそうです。
Shanling ME600前者の場合は「ホワイト」フィルターにより煌めきを増した印象は楽しく感じますし、後者の場合は「レッド」フィルターにより全体としてやや暖色寄りになりますがニュートラルな印象で楽しむのも良いかもしれませんね。個人的には「レッド」フィルターで高域が伸びるタイプの銀メッキ線や純銀線での変化を試したいかなとも思っています。

中音域はV字傾向のため曲によっては僅かに凹みます。それでも見通しは良く解像感および分離も良いため不測に感じることはありません。最近のハーマンターゲット的なU字またはW字傾向のようにボーカル域が前傾する印象は無く、自然な位置で定位し、音源に忠実で実在性のある表現力があります。女性ボーカルは伸びやかさがあり、男性ボーカルは豊かさがあり、不足を感じることは無いでしょう。自然な輪郭と音像表現で、中低域付近には適度な温かみも感じつつ、同時に解像感も高く分離も良い印象。音場も自然な広さがあり奥行きもV字的なレイヤー感があり聴き応えのある立体感を演出ししてます。良質なV字方向のリスニング傾向でモニター的はありませんが、癖の無い中音域の表現を好まれる方にはとても好感できる中音域だと思います。

Shanling ME600低域は「Shanling ME600」における最もポイントとなる音域で、優れた質感と深さのある響きの良さが印象的です。並列稼働する2基の低域用ダイナミックドライバーにより自然な印象を維持しつつ適度にブーストされた強さがあり、同時に小口径ドライバーらしい締まりの良さとスピード感も実感出来ます。ミッドベースは直線的でインパクトがあります。中高域との分離も良く、存在感のある音を鳴らします。重低音は量感とともに非常に深く沈み、心地よい響きがあることで全体を下支えし、空間表現を演出ししてます。


■ まとめ

Shanling ME600というわけで、「Shanling ME600」は低域および中音域の質感にフォーカスした音作りでバランスの良いV字傾向のサウンドが楽しいイヤホンでした。
多少の異論はあると思いますが、例えばShure「AONIC5」「SE846」、Sennheiser「IE400 PRO」「IE600」のような「定番」製品以外では、この価格帯のミドルグレードは複数のイヤホンを買っているようなマニア向けをある程度は想定したもので、オールラウンドより、いかに個性的か、みたいな要素も重要だと思っています。そういった意味では「Shanling ME600」はウィークポイントもあるものの興味深いアプローチにより同価格帯にあった質感を実現しており、良いイヤホンのひとつだと感じます。(マニアにとっては)結構手頃で買うことも可能になってきているので興味のある方は試して見るのも良いと思いますよ。