AFUL PolarNight

こんにちは。今回は 「AFUL PolarNight」です。高度な技術力と強い情熱で次々と新製品をリリースしている「AFUL」から同社としては初となるイントラコンカ(インナーイヤー型)イヤホンが4月10日にリリースされます。独創的で美しいデザインに加え、独自開発の15.4mmドライバーおよびデュアル共振・デュアル減衰振幅制御技術により優れたサウンドを実現しています。

■ 製品概要と購入方法について

AFUL Acoustics」は現在ではマニアの間で人気ブランドのひとつとして認知されている、中国の新進気鋭のポータブルオーディオのブランドで、これまでにリリースされた製品はすべて数々の独自特許技術に裏付けられた質の高いサウンドにより高い評価を受けています。

今回の「AFUL PolarNight」はAFULとしては初めてのイントラコンカ(インナーイヤー型)イヤホンです。本体は青と赤の貝殻の層を使って製品名称の「Polar Night(極夜、白夜の逆で南極の冬期の夜が明けない日)」を表現しており、左側は極夜のオーロラによる虹の橋をイメージした「Silent Polar Night」、右側は極夜が明けた輝きを持った地球と太陽のイメージによる「Dawn's Fiery Blaze」というコンセプトでデザインされています。
AFUL PolarNightAFUL PolarNight
AFUL PolarNight」では、新たなイントラコンカをデザインするにあたり、AFULは従来の設計とは異なる「デュアル共振・デュアル減衰振幅制御技術(Dual-Resonance, Dual Damping Amplitube Control Technology)」による、2チャンネルの共鳴気流制御システムを採用。高度な音響構造設計とダンピングAとダンピングBの減衰比により、リアルな低周波とボーカルを実現しています。
AFUL PolarNightAFUL PolarNight
ドライバーには独自開発による15.4mm PU+PET複合振動板ダイナミックドライバーを搭載。N52強磁力ネオジム磁石が高周波を拡張し、高張力銅被膜アルミニウムボイスコイルは銅の高伝導性とアルミの軽量性を融合し、よりクリアで拡張性の高いサウンドを実現します。
そして「AFUL PolarNight」の本体は金属製のフロントキャビティと高精度3Dプリントによるリアキャビティによって成形されており、美しいデザインのユニークな外観とともに軽量かつ完成度の高いサウンドとを実現します。
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ケーブルにはMMCXコネクタを採用した5N 高純度単結晶銅線を112本使用した4芯ケーブルが付属。プラグは3.5mmシングルエンドまたは4.4mmバランスを購入時に選択できます。
AFUL PolarNight」は2025年4月10日発売開始で価格は179.99ドル、アマゾンでは26,977円です。

HiFiGo(hifigo.com): AFUL PolarNight


AliExpress(HiFiGo): AFUL PolarNight


Amazon.co.jp(HiFiGo): AFUL PolarNight


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして HiFiGo より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

というわけで、今回も新製品のリリースにあわせてレビューサンプルの提供をいただきました。届いたのは4.4mmプラグのモデル。製品画像を掲載したクールなパッケージデザインが印象的です。
AFUL PolarNightAFUL PolarNight

パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、スポンジイヤーパッド(赤、青、黒)交換用スポンジフィルター、レザーケース、説明書など。
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AFUL PolarNight」の本体デザインは円形の金属製フロントキャビティと3Dプリントによる特徴的な形状のリアキャビティで構成され、同クラスの高級イントラコンカとしてはかなり軽量に仕上げられています。そのため重量で耳から落ちる、という心配もほぼ無いと思います。
特徴的な形状のリアキャビティ内部には特許技術である共鳴気流制御システムが内蔵されており、低域およびボーカル域の質感の向上を行っています。このように低域強化のためにドライバー背面に独自のアプローチを行うのは、Smabatのバックロードホーン型スピーカーに似た音響構造などいくつかの方法がこれまでも存在しますが、「AFUL PolarNight」では二重ダンパーによる気流制御というまた新たな手法が組み込まれています。
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そして外観上の大きな特徴として、「AFUL PolarNight」のリアキャビティには右側はレッド、左側はブルーの貝殻の層による鮮やかなデザインの装飾が施されています。このように美しいIEM製品のフェイスパネルのようなリアキャビティのデザインは他のイントラコンカではたぶん皆無で結構斬新なアプローチだと思います。イントラコンカは高級モデルでデザイン性の高い製品でも質実剛健なイメージのものが多く、装着した状態でのファッション性などのな視点は確かになかったように思います。このようなアプローチは今後の各社のイントラコンカ製品でも新たなトレンドになるかもしれませんね。
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コネクタにはMMCXが採用されており、リケーブルにも対応します。二重ダンパーの調整弁が本体上部にあり、ここに小さなスポンジが埋め込まれています。このスポンジは劣化した場合などに交換が可能で、交換用のスポンジが複数付属します。
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またイントラコンカでは一般的なスポンジイヤーパッドはドーナツ型が3色付属します。装着性の工場や低域強化で使用できます。ケーブルは高純度単結晶銅線の撚り線タイプで、弾力のあるブラックの樹脂被膜で覆われています。ケーブル自体は適度な太さがあるため絡まりにくく、また手触りもとてもしなやかで取り回しも良好です。またタッチノイズもほとんど無い仕上がりになっています。


■ サウンドインプレッション

AFUL PolarNight」の音質傾向はやや中低域寄りのニュートラル傾向で、バランスとしてはややU字寄り、といった印象。カナル型のイヤーモニターのようなダイレクト感とは異なる、イントラコンカらしい空間表現と音場感をもちつつ、ボーカル域は生き生きとしており、高域も伸びの良さがあります。低域もややモニタースピーカー的な音像表現でニュートラルながら量感と存在感があります。

AFUL PolarNightちなみに、「AFUL」というブランドは製品ごとに新しい技術を投入することでも知られていますが、過去のレビューでも記載した通り、同時に「その構成である意味」みたいなものを凄く考えてサウンドデザインを行っている、という印象があります。結果として3BA構成の「Explorer」では上位の「Performer」シリーズとは音作りのアプローチが全く異なる、みたいなケースもあります。これは単に価格帯やグレードの違いという分類ではないことを示しており、例えば1BA構成の「Magic One」などは数々のシングルBA構成の名機に対して「AFUL」はどのような技術を採用して向き合うか、みたいな気概を感じさせる要素がありました。そして今回の「AFUL PolarNight」で同社が最も考慮したのが低域から中音域の音響設計で、イントラコンカの特徴であるよりスピーカー的なサウンドを活かしつつ高域および中高域は明瞭感を持ったニュートラル方向で調整し、さらに独自技術で中音域および低域も自然な量感を加えることで、よりバランスに優れ、詳細なリスニングにも対応できるサウンドを目指しているように感じます。

AFUL PolarNightAFUL PolarNight」の高域は、自然な印象ながら明瞭かつ伸びやかな音を鳴らします。癖の無いニュートラルな表現で、イントラコンカらしい自然な距離の定位感をもちながら解像感も高くスッキリした見通しの良さもあります。いっぽうで過度な刺さりなどの刺激を抑え聴きやすくコントロールされています。この点は同じ明瞭でも寒色系でやや前傾する印象の「NICEHCK EBX25Ti」などの製品とは異なる点で、ハイハットなどのシンバル音など細かい音も詳細で、高域成分の多い曲でも正確さがありますが、定位感や空気感はカナル型とは異なるイントラコンカらしい音を鳴らす点が特徴的です。

中音域は、凹むことなく鳴り、高域同様に癖が無く透明な印象でニュートラルに再生されます。全体のバランスとしては若干低域寄りのU字に近いバランスだと思いますが、ボーカル域や演奏は自然な距離で高品質なモニタースピーカー的な印象で定位します。この辺もカナル型とは異なる空間表現で、「AFUL PolarNight」がイントラコンカの特徴を上手く引き出した音作りをしていると感じさせる要素です。
AFUL PolarNightボーカル域は自然ながら透明度の高さによりはっきりした輪郭を持っており、男性ボーカルも女性ボーカルも明瞭な印象で再生されます。女性ボーカルもカナル型イヤホンのような前傾した印象は無いものの自然な伸びの良さと抜け感があり、男性ボーカルは豊かさがあります。ボーカル域全体としても原音に忠実で一般的なイントラコンカでは感じないような微妙なニュアンスも捉えることができます。また演奏との分離も良好で、際立つような印象は無いものの、本来の音色を維持しており、鮮明さと響きの良さによる自然な空間表現を実感出来ます。

AFUL PolarNight」では特許技術による、デュアル共振構造により中音域の強化(チャンネルA)と低域の制御(チャンネルB)が行われ、デュアルダンパーにそれぞれのチャンネルで適切な気圧調整が行われる仕組みを採用しています。そのため過度に寒色寄りなチューニングでは無く適度に柔らかさも感じさせつつ、モニタースピーカーのような高い解像感とニュートラルな音像表現を実現していると感じます。

そのため、低域についてもニュートラル系の寒色系イントラコンカと比べると十分な量感があり、深く豊かさのある低音を鳴らしますが、同時にイントラコンカでありがちの低音がボワ付くような印象を無くし、中高域との自然な分離感とレスポンスの良さを感じさせます。
AFUL PolarNight特性上、主体となるのはミッドベースで、イントラコンカ型らしい低音が多少前傾した音場感を生成しますが過度に強調することはなく、ニュートラルでかつ豊かな臨場感を感じさせる表現にまとめられています。ミッドベースは過度に膨らむこと無く締まりの良い質感を維持しており、強いインパクトを与えながら自然な輪郭の音を鳴らします。重低音はイヤーパッド無しでは量的には控えめですが、明瞭感やスピードを維持しながら深く沈み自然な印象で下支えします。イヤーパッドはスポンジタイプのドーナツ型が付属しますが、キレの良さを維持しながら低域を強化したい場合はシリコンリングタイプのものを別途用意する方が良さそうです。


■ まとめ

というわけで、「AFUL」が同社として初めてリリースしたイントラコンカ(インナーイヤー型)イヤホンである「AFUL PolarNight」ですが、やはりというか、同社らしいこだわりの多さを実感させるイヤホンに仕上がっていました。イントラコンカとしては200ドル弱、2万円台の価格設定は比較的ハイグレードに位置しますが、音質面については奇をてらうこと無くイントラコンカらしいある意味正統派な音作りで、かつ価格に見合う良い仕上がりだと思います。
AFUL PolarNight外観においては金属部分と3Dプリントによる樹脂部分を上手く組み合わせ軽量化を実現し装着感を向上。またイントラコンカながら装着時の外観も考慮したデザイン性の高さも特徴的です。音質傾向としては高級イントラコンカが多少カナル型を意識したより寒色系のサウンドに向かうなかで、イントラコンカらしい自然な音像表現を維持しながらモニタースピーカーのような解像感やニュートラルなサウンドバランスで仕上げられており、「AFUL」らしい「この構成である意味」をしっかり感じさせる音作りを実現していると感じます。
AFUL PolarNight」は4月10日よりHiFiGoの各ショップで購入できますので、興味ある方は是非とも挑戦いただければと思います。