TRN SHELL

こんにちは。今回は 「TRN SHELL」です。3種類のダイナミックドライバーと6mmサイズの小型平面駆動ドライバーの組み合わせによる「3DD+1Planar」構成のハイブリッドモデルです。製品名称の通り貝殻をイメージしたフェイスデザインの金属製シェルを採用し、ノズルフィルターの採用など充実した仕様ながら50ドル台の低価格にまとめられています。

TRN SHELL
■ 製品概要と購入方法について

TRN SHELL」は10.5mm、8mm、6mmのトリプルダイナミックドライバーを組み合わせた複合ユニットと超高域用の6mmのカスタム平面振動板ユニットを搭載したモデルです。
本体デザインは貝殻の柔らかな曲線とイヤホンの魅力を完璧に融合し、翡翠のように温かみのある滑らかで繊細な質感を表現しています。外装は電気メッキにより鏡面処理を施された金属製で、流線型のデザインによりシンプルでありながらモダンな印象を与え、同時に高い強度と優れた耐久性を兼ね備えています。
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TRN SHELL」のダイナミックドライバー部には10.5mm(ベリリウムメッキ振動板)、8mm(PET振動板)、6mm(チタンメッキ振動板)の 3種類の異なるサイズのドライバーを搭載。各ドライバーが異なる周波数帯域で調和することで、低音域がより豊かで、中音域がより透明で、高音域がよりクリアなサウンドを実現します。
そして超高域用に6mmのカスタム平面振動板ユニットを搭載。2μmの軽量な平面振動板は超高域の伸長性能が向上。風通しがよく、超高域の倍音を明瞭に再現します。
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各ドライバーは10.5mmと8mmのダイナミックドライバーでひとつの大型シャーシに6mmのダイナミックドライバーの小型シャーシが組み合わされています。さらに平面駆動ユニットは10.5mm+8mmの複合ユニットの前面に直列に配置されています。構成としては「White Tiger」より6mmダイナミックドライバーを追加され、「JAWS」より4BAユニットを除いた仕様、という内容です。
さらに「TRN SHELL」では交換式の真鍮製フィルターノズルを採用しており、異なるチューニングを楽しむことができます。ノズルは「グリーン」リングの「Reference」を標準に、「ブラック」リングの「Transparent」、「レッド」リングの「Atmospheric」に交換が可能です。
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ケーブルには4芯タイプの銀メッキハイブリッド線ケーブルを付属。各芯線は89芯の高純度無酸素銅と銀メッキのリッツ構造を採用します。プラグは3.5mmおよび4.4mmに交換可能です。

TRN SHELL」の価格は58.99ドル、アマゾンでは8,950円です。

AliExpress(TRN Official Store): TRN SHELL


Amazon.co.jp(TRN直営店): TRN SHELL ※掲載時10% OFFクーポン配布中


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして TRN Audio より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

TRN SHELL」のパッケージは貝殻のデザインの海洋のイメージ。光の反射でラメ色に光るパッケージが高級感があります。パッケージサイズやデザインは「TRN JAWS」を踏襲していますね。
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パッケージ内容は本体、ケーブル、4.4mm交換プラグ、イヤーピース(シリコン製4種類、それぞれS/M/Lサイズ、ウレタン製1ペア)、交換用ノズルフィルター、樹脂製ケース、ケース用ストラップ、説明書など。50ドル台のイヤホンとは思えない充実した内容となっています。
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本体は鋳造による金属製で貝殻のデザインが特徴的なシェルデザインです。ドライバー構成としては「TRN JAWS」から4基のBAを除いた仕様で、10.5mm+8mmダイナミックドライバーと、6mmのダイナミックドライバーおよび6mm平面駆動ユニットに分けた2種類のシャーシのドライバーユニットを収容しています。
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金属シェルのため多少重量があるのですが、フェイス部分はコンパクトなサイズ感にまとまっており、耳への収まりは良い印象。イヤーピースは通常タイプ(白色、黒色の2種類)および「TRN T-Eartips」に加え、今回は「Softears U.C.」タイプの透明な液体シリコン製イヤーピースも付属します。とのよりホールド感が向上し、重量のあるシェルでもしっかり装着できる印象です。
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交換式のフィルターノズルは、主にメッシュ裏のフィルター材の厚みにより違いがあり、「レッド」(Atmospheric)は「グリーン」(Reference)より目が細かく、「ブラック」(Transparent)がもっとも薄いフィルター材が使われているようです。
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ケーブルはメタリックグレーの4芯ミックス線ケーブルで、コネクタは中華2pin仕様。よりリケーブルがしやすくなっています。また4.4mmプラグへの交換が可能です。


■ サウンドインプレッション

TRN SHELLTRN SHELL」の音質傾向はバランスの良いV字を描くスッキリしたドンシャリ傾向。全体として寒色傾向で明瞭感のあるサウンドですが、過去のTRNのような多少シャリ付きが目立つような金属質な派手さは無く、3種類のダイナミックドライバーが自然な音色で再生されます。
高域および低域ともニュートラルな範囲のピークにコントロールしつつ、非常にスッキリして透明感のあるサウンドにより各音域が際立つような印象。
中音域は癖の無いバランスの良さがあります。女性ボーカルの高音など中高域付近に強めのアクセントがあるものの歯擦音など刺激を感じやすい音域は調整され、高域は自然な伸びやかさでスッキリ抜けるような印象で調整されています。また低域も過度にブーストされた印象は無いものの、キレがあり深さとインパクトのある音で十分な量感と強さを感じさせます。

TRN SHELL3種類のフィルターノズルは主に中高域から高域にかけて変化します。「ブラック」(Transparent)ノズルは高域強調タイプで特に女性ボーカルなどがよりスッキリした印象になります。「レッド」(Atmospheric)はバランスの変化はほぼ無いものの、全体的に若干ウォームな印象に変化します。
どのフィルターも大きな変化では無く、多くの場合は標準の「グリーン」(Reference)フィルターのままの状態で特に問題は無いと思います。そのうえで好みや再生環境に応じて交換してみるのも良いでしょう。

TRN SHELL」の高域は、スッキリした伸びの良い印象ながら明るすぎず、自然な明瞭感があります。6mmダイナミックドライバー平面駆動ユニットの組み合わせで多少強調感がありニュートラルな印象とは異なりますが、バランスとしては整っておりリスニング的な楽しさがあります。
TRN SHELLまた刺さりやすい帯域はコントロールされ聴きやすくまとめつつ、ハイハットなどの高音やさらに上の高高域は平面駆動ユニットにより補完され強めの主張があります。それでも余韻は少なくあっさり目の印象のため、過度に目立つことは無く、全体の中で適度なアクセントとして心地よく鳴ってくれる印象です。、「ブラック」(Transparent)フィルターでは中高域とあわせて高域も若干のへんかがあり、よりスッキリした印象になります。逆に、「レッド」(Atmospheric)では名称通り僅かですが空気感が増します。

中音域はV字傾向のバランスのため曲によってはやや凹みますが、透明感が高く見通しの良いサウンドのため不足を感じることはありません。また解像感も適度に高い印象です。またボーカル域は多少前傾し主張があります。特に女性ボーカルのアニソンなどでは高音などの中高域付近のアクセントは最近では一般的なハーマンターゲット寄りのU字傾向と比べてもより強めではっきりとした主張で明瞭に伸びるため明瞭なW字寄りに感じる場合もありますね。
TRN SHELL寒色系のサウンドですが高域同様に硬質感は少なく、鮮やかさを持ちつつ滑らかさを感じる印象に調整されています。高域用(6mm)のチタンコート、低域用(10.5mm)のベリリウムコートに対して、中音域(8mm)はPETの樹脂振動板を使用する使い分けが音像表現に上手く働いている印象です。同様に男性ボーカルもドライになりすぎず適度な艶感を持ちますが、低音は低域同様にキレ重視の印象となるため多少あっさりした印象に感じるかもしれませんね。そのためバラード曲などでは標準の「グリーン」(Reference)より「レッド」(Atmospheric)フィルターの方が好感される方もいらっしゃると思います。
音場は適度な広さですが見通しが良い印象のため音数の追い曲でも窮屈さは感じません。またV字傾向による適度な前後のレイヤー感もあります。ボーカルと演奏の分離も適切で、演奏は強調感は無いものの滑らかさを感じる印象です。

TRN SHELL低域は抜けの良さを持ちつつも深さと力強さがあります。ニュートラルなバランスによる低域の量感で中高域との分離も良好です。また低域の解像感も高い印象で、スピードの速さとキレの良さがあります。ミッドベースは直線的でクリーンですがアタックは強く、ベースは深さと存在感がありますが、重すぎず軽快さと豊かさを感じる音色があります。重低音は深く沈み心地よい重量感で下支えしますが、抜けの良さにより重すぎず自然な印象です。
全体として滑らかですがスッキリとした寒色系で、余韻や豊かさを強調する音作りではありませんが、この価格帯で可能な音作りを認識した上で上手くまとめていると感じます。


■ まとめ

TRN SHELLというわけで「TRN SHELL」ですが、50ドル台のイヤホンとは思えない充実したアクセサリを含むパッケージングと美し金属製のシェルデザインをもち、音質面ではTRNらしい寒色系の印象と、また低価格イヤホンとしての質感を向上させていくうえでのアプローチに他社との違いが明確に存在し、非常に興味深く感じました。
中華イヤホンの世界では、KZなどのもともとの低価格ブランドや、Moondrop、TANCHJIM、SIMGOTなどのミドルグレードを主戦場とするメーカーの低価格モデル、そしてTANGZUやTruthearなどの新興勢力など、50ドル~100ドルの価格帯は「低価格の少し上くらい」のグレードで話題性のある製品が群雄割拠していますが、多くのメーカーがU字傾向のニュートラル方向でミドルグレード寄りの製品アプローチを行っているのに対し、TRNは「低価格モデルからのアップグレード」みたいなあくまでTRNらしさのなかで質の向上をしているのがとても面白いですね。結果、他のメーカーの同価格帯の製品はミドルグレード以上のモデルを使っている方にとっては廉価版に過ぎずあまり魅力を感じない場合も実は結構あるなかで、TRNは「こういう音を楽しみたい」場合の選択肢として成立することが多い印象です。この姿勢は好感が持てる要素で、今後もTRNらしくラインナップを広げて欲しいと感じました。