ZiiGaat Arcanis

こんにちは。今回は 「ZiiGaat Arcanis」です。前回に引き続き、「ZiiGaat」ブランドによる新しいイヤホンで、2DD+5BA構成の上位グレードのモデルです。Knowles製の5基のBAドライバーとアイソバリック構成構成の2DDユニットによるエネルギッシュかつ非常に高品質なサウンドを実現しています。

■ 製品概要と購入方法について

「ZiiGaat」は10年以上にわたってOEM/ODMで製品を提供してきた中国の製造メーカーが立ち上げた独自ブランドで、主にLinsoul系セラーで販売が行われています。昨年以降コラボ製品なども含め精力的に新モデルを投入しており、マニアの間での認知度も高くなっていますね。

ZiiGaat Arcanis」は 2DD+5BA構成モデルで、ほぼ同時発売で前回レビューした「ZiiGaat Lush」の上位モデルの位置づけになります。より正確でバランスのとれた音色特性とプロフェッショナルレベルのパフォーマンスを実現するように設計されたIEM製品で、5基のKnowles製BAドライバーとアイソバリック構成のデュアルウーファーを構成する2DDユニットにより、高品質なサウンドを実現しています。
ZiiGaat ArcanisZiiGaat Arcanis

ZiiGaat Arcanis」は2基の10mmダイナミックドライバーを搭載し、等圧配置によるアイソバリック構成を採用しています。この構成によりサブウーファーのような重低音を実現し、出力と効率を最大限に高めながら歪みを低減。クリアでフォーカスされた低音でありながら優れた響きと質感を実現します。
また中音域と高音域は5基のKnowles製バランスド・アーマチュア(BA)ドライバーにより駆動されます。中低域用には2基の「RAF-32873」を搭載し、ダイナミックドライバーとの帯域を統合し、中音域から中高域にはフルレンジ用の「ED-29689」を2基搭載し、さらに「RAD-33518」をツィーターユニットとして搭載することで高音域の明瞭なディテールを実現します。
ZiiGaat ArcanisZiiGaat Arcanis
ZiiGaat Arcanis」は各ドライバーグループをそれぞれの周波数帯域に割り当て可能な4Wayのパッシブクロスオーバーネットワークを搭載。独立したサブウーファーによるクリアな低域、膨らみや色付けのない完全にフラットな中域、そして自然な高域のカーブなど、プロフェッショナルな音色バランスを実現。ミュージシャンやエンジニア、そして正確なオーディオ再生を求めるオーディオファンにとって最適なサウンドを提供します。
ZiiGaat ArcanisZiiGaat Arcanis
またシェルは医療グレードのレジンを使用した3Dプリントで成形され、手塗りのフェイスプレートにより美しく仕上げられています。
ZiiGaat Arcanis」の価格は399ドル、アマゾンでは65,780円です。セール価格などを利用したいかたはAliExpress等のほうがメリットがあります。またアマゾンは掲載時点でプライム扱い(アマゾン倉庫から発送)のためすぐに届きますし、万が一、製品品質に問題があった場合は返品等の対応を依頼しやすいメリットがありますね。

AliExpress(Linsoul Audio Store): ZiiGaat Arcanis ※4/21までセール価格359.10ドル


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Linsoul より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

ZiiGaat Arcanis」のパッケージは比較的コンパクトなボックス。前回レビューした「ZiiGaat Lush」と同じサイズでまとめられています。
ZiiGaat ArcanisZiiGaat Arcanis
パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(S/M/Lサイズ)、ウレタンタイプ1ペア、ケース。400ドル級のイヤホンとしてはかなりシンプルな内容で、価格のほとんどがイヤホン本体に全振りされているのが伺えますね。
ZiiGaat ArcanisZiiGaat Arcanis

本体は樹脂製でステムノズルは金属製。フェイスパネルにはエメラルドグリーンの美しい装飾が施されており、美しく落ち着いた印象で高級感があります。また側面にはメッシュパーツが埋め込まれたベント(空気孔)があります。
ZiiGaat ArcanisZiiGaat Arcanis
シェルサイズは前回レビューした「Lush」など既存のモデルより僅かに大きく、装着分の形状やステムノズルの角度などが微妙に異なっています。ケーブルは黒い樹脂被膜の4芯タイプ。柔らかく取り回しは良い印象です。プラグは中華2pinタイプで、一般的な2pin仕様のケーブルへのリケーブルも容易ですね。
ZiiGaat ArcanisZiiGaat Arcanis

アイソバリック(水平対向)の2DDドライバーを搭載する同価格帯の製品というと、「THIEAUDIO HYPE4」や「Moondrop Blessing3」「DUSK」などがありますが、外観の比較するとフェイスサイズはやや丸みを帯びた「ZiiGaat Arcanis」が少し大きく、搭載ドライバーの違いを感じますね。それでもフィット感は良くやや大きめのシェルサイズですが装着感は良好です。
ZiiGaat ArcanisZiiGaat Arcanis
イヤーピースは標準ではステムノズルが太いためイヤーピースは開口部の大きいタイプが付属します。「Lush」同様に新しいタイプにアップデートされており装着性が向上しています。ただし、私の場合は少し小さめのサイズで耳奥までしっかり挿入して装着する方が良いため「Spinfit CP100+」に交換しています。


■ サウンドインプレッション

ZiiGaat ArcanisZiiGaat Arcanis」の音質傾向は、フラット方向のニュートラルバランスで、3種類5基のKnowles製BAとアイソバリック構成2DDによる4Wayの特徴を活かし、全体的に明瞭ながら非常に滑らかな音像表現と力強さと圧倒的な深さを持つ低域が印象的なサウンドです。前回レビューした「Lush」もニュートラルながら「ZiiGaat」らしい力強さも感じるバランスの良いサウンドでしたが、「ZiiGaat Arcanis」では全ての音域に対して心地よい主張と大きく向上した質感を持ち、非常に豊かな音場表現を実感出来ます。399ドルとミドルグレードのなかでも比較的高価格帯の製品ですが、価格に見合う非常に満足度の高いサウンドだと思います。

インピーダンス12Ω、感度106dBで駆動力のある再生環境であれば十分に堪能できます。小型のオーディオアダプター等で低域が寄り強めに感じる場合はハイゲインで鳴らすかリケーブルを検討するのも良いでしょう。もっとも、このグレードの製品を使用されるマニアであれば再生環境はあまり問題にはならないと思いますが、リケーブルでの変化はある程度楽しめる印象です。

ZiiGaat ArcanisZiiGaat Arcanis」の高域は、明瞭で伸びのある印象ながらフラット方向にピークを抑え、滑らかで聴きやすさを感じる印象。中音域から中高域にかけてはKnowlesの定番フルレンジBAである「ED-29689」をデュアルで搭載することでアイソバリック構成の強い低域に負けない主張を持っており、中華イヤホンではお馴染みの「RAD-33518」(同じく定番の「WBFK-30095」の互換ユニット)をツィーターとして備える非常に贅沢な構成により、高音域も音色も非常に鮮やかで見通しの良さをもちつつ、過度に硬質でドライな印象にならず、自然な質感を維持しています。同クラスのV字傾向の寒色系のイヤホンと比較するとキレや解像感はそれほど強調していませんが、十分な主張があり非常に気持ち良く鳴ってくれる高音、という印象です。ちなみに「RAD-33518」および「WBFK-30095」は、いわゆる中華BA(Bellsingなど)の「30095」と比べるとピークが低めで、中高域用など比較的広いレンジで使われることも多いユニットですが、「ZiiGaat Arcanis」では適度な滑らかさを得る上で良い選択になっているようですね。

ZiiGaat Arcanis中音域は全体としてフラット方向のニュートラルバランスにまとめつつも強めの主張を持ち、凹むことなく再生されます。前述の通り2基の「ED-29689」がしっかりと存在感を発揮しつつ、さらに中低域には「RAF-32873」を2基搭載することで非常に厚みのある中音域を実現しています。「RAF-32873」もKnowles製のフルレンジユニットのひとつですが、より中低域寄りの特性を持つため、中音域の下の方から低域の上の方までをカバーするユニットとしては最適と言えるでしょう。十分な解像感と分離の良さを持ちつつ、さらに2種類のBAのクロスオーバー適切で中音域全体は滑らかで、いわゆるハイブリッド的、人工的な印象はありません。
ボーカル域も自然に定位しますが主張かがるため不足を感じることはありません。女性ボーカルの高音は伸びやかで抜けも良く、非常にエネルギッシュな印象。男性ボーカルも厚みがあり余韻なども含め豊かな印象。演奏との分離も良く演奏は活き活きとしており、ストリングスやブラスは適度な艶感で自然な鮮やかさも感じさせます。音場は自然な広さと奥行きがあります。広がりというより原音に忠実に空間を描写している印象。窮屈さを感じること無く自然な定位感があります。

ZiiGaat Arcanis低域は中音域の下の方と同様に2基の「RAF-32873」ユニットにより描写されるミッドベースをアイソバリック構成の2基のダイナミックドライバーによるウーファーユニットにより強力に下支えします。バランスとしてはニュートラルなものの、非常に強力な重低音の表現により全く不足を感じること無く心地よいインパクトとエネルギーのある臨場感を堪能できます。
ちなみに、「アイソバリック(Isobaric)方式」については過去に「THIEAUDIO HYPE2」「HYPE4」でも説明していますが改めて記載すると、2基以上の同一のウーファーがタンデム稼働する仕組みで、同サイズの2DDより1.5倍~2倍のパワーを発揮する特徴があります。スピーカーの世界では「LINN」が約50年前に同方式を利用した製品特許を持っているほか、TOHOシネマズの「轟音シアター」など、映画館等の業務用で利用されるケースも多いようです。
一般的に低域の音圧を高めると量感も同様に増すため、低域が前面に出ることで相対的に中高域が下がり、低域過多のバランスになったり、多少マスクすることで分離が下がる場合があります。タイトに鳴るキレ重視のドライバーを使用すると、ドライな印象となり臨場感が下がる場合があります。これに対し、「ZiiGaat Arcanis」ではアイソバリック構成を採用することで量的にはニュートラルにまとめつつ音圧のみを高め、分離感や中高域の主張を維持したまま臨場感を高めることができています。同様のアプローチは「THIEAUDIO HYPE4」などでも言えますが、「ZiiGaat Arcanis」はよりパワフルな低域で非常に心地よいチューニングに仕上がっています。


■ まとめ

ZiiGaat Arcanisというわけで「ZiiGaat Arcanis」ですが、高性能なKnowles製BAをふんだんに使用し、アイソバリック構成の2DDユニットと組み合わせることで、フラット方向のニュートラルなバランスにまとめつつ、ひじょうにエネルギッシュで心地よいリスニングサウンドに仕上げられていました。同社の上位モデルらしく、低域のインパクトにくわえまとめかたの上手さなど「ZiiGaat」らしさを最大限に活かした仕上がりだと感じます。
個人的には、特に依頼品の場合、あまり忖度的な印象にならないように手放しでは褒めないことにしているのですが(汗)、「ZiiGaat Arcanis」は私自身の好みに相当刺さりました。「Ziigaat」の昨年あたりにリリースされた製品はちょうど私が非常に忙しい時期と重なっていたため「ESTRELLA」など聴いていない機種もそれなりにあるのですが、ここにきて改めて購入して比較したくなりました(^^)。付属品の少なさなどかなりマニア向けだとは思いますが、非常に良いイヤホンだと思います。