
こんにちは。今回は購入済み未レビューのイヤホンを紹介する「棚からレビュー」です
今回のイヤホンは 「Softears Volume S」です。比較的ハイグレードな製品を中心に展開する「Softears」のエントリーモデル「Volume」からシェルデザインを一新し、ドライバー構成もダイナミックドライバーにパッシブ振動板を追加し2DD+2BAにアップグレードしています。クールなデザインとインピーダンスを変更できるギミックなど挑戦的な試みも感じられる製品といえますね。
■ 製品概要と購入方法について
中国発のハイグレードイヤホンブランド「Softears」は2017年に設立し、日本へは2021年4月に上陸し、過去にレビューした「Softears RSV(RS5)」のほか「RS10」「CERBERUS」の3モデルを投入。2022年には1DD+2BAの「Volume」、シングルダイナミックの「Twilight」、2023年には4BAの「Studio 4」、2024年には最上位の「Enigma」(2DD+6BA+4EST)とラインナップを拡充しています。
今回の「Softears Volume S」はエントリークラスの「Volume」のアップグレードモデルで、ドライバー構成は2DD+2BA構成にとなり2種類のインピーダンスモードを備えた仕様にアップグレードされています。


ドライバーは「Volume」よりさらに進化し、2基のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバーは高域用(WBFK)と中音域用フルレンジ(ED)の各BAユニットと独立した音導管設計を採用。高域はよりクリアに、中音域はより滑らかになりました。そして低域用のダイナミックドライバーは、ひとつのシャーシにアクティブとパッシブの2種類の振動版を備えた2DD構成を採用。アクティブドライバーはチタンドーム+シリコンサスペンションの複合振動板を採用。歪みを抑えた低域を実現します。さらにパッシブドライバーにはウールベースの振動板を使用し、アクティブドライバーにドーム状に重ねることで不要なノイズが吸収されよりパワフルな低域を実現します。


またクロスオーバー処理には上位モデルの「RS10」のRCチューニング技術を採用しています。さらに各ドライバーの伝送経路にはより低遅延で位相を揃え一貫性を保つチューニングが施され、より正確な定位表現を実現し、スリット型ベントによるエアフローコントロール技術により空気圧を最適化しています。
そして「Softears Volume S」の大きな特徴として、新たに2種類のインピーダンスモードの切り替えが可能な革新的なコンセプトを採用。特定の周波数帯域だけでなく全体域をバランスのとれた状態で変更が可能で、活き活きとした高域を持つ「低インピーダンス(ポップス)」モードとバランスの取れたふくよかなサウンドを持つ「高インピーダンス(クラシック)」モードの2つのモードをシームレスに切り替えることが可能です。


ケーブルは高純度OFC線を使用したアップグレードケーブルが付属。コネクタは0.78mm 2pinを採用し、3.5mmおよび4.4mのプラグ交換が可能です。またイヤーピースは「U.C.イヤーピース」および「Bタイプ」イヤーピースが各サイズ付属します。
「Softears Volume S」の価格は319ドル、アマゾンでは50,150円です。
AliExpress(Shenzhenaudio Store): Softears Volume S
Amazon.co.jp(SHENZHENAUDIO): Softears Volume S
Amazon.co.jp(LEAUDIO-JP): Softears Volume S
免責事項:
本レビューは個人的に製品を購入し掲載している「購入者レビュー」となります。
本レビューに対してそれ以外の金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
というわけで、今年に入って購入した 「Softears Volume S」です。パッケージはブラックを基調とした落ち着いたデザインにまとめられています。


パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、交換用プラグ、モード変更ピン、U.C.イヤーピース(S/M/Lサイズ)、Bタイプイヤーピース(S/M/Lサイズ)、イヤホンカバー、クリーニングクロス、レザーケース、説明書、保証カードなど。


本体は3DプリントによるハウジングとCNC加工されたアルミ合金製フェイスプレートにカーボンファイバー製のフェイスが装飾されています。Softears製の製品のなかでもフェイスデザインは屈指の格好良さで(好みもあると思いますので異論は認めます。笑)、つい見た目買いをしそうになります(^^)。シェルサイズはやや大きめですが耳への収まりは良い形状です。


ステムノズルは返しのない円筒形の形状ですが太さがあるため、イヤーピースの軸部分でしっかり固定されます。カーボンファイバー製のフェイスプレートにはインピーダンスモードを変更するロータリースイッチがあります。スイッチを左側に回すことで「Low Impedance」モード、右側に回すことで「High Impedance」モードに設定されます。


ケーブルは布張りの4芯線の太めのケーブルが付属します。コネクタは埋め込みタイプの0.78mm CIEM 2pinタイプ。プラグはネジ止め式の交換正規プラグを採用しています。


アクセサリは充実しており、イヤーピースも「Softears U.C.」と一般的な形状の「Bタイプ」イヤーピースが各サイズ付属します。
■ サウンドインプレッション
「Softears Volume S」の音質傾向は標準の「Low Impedance」モードでは、ニュートラル傾向ながらU字または若干のW字方向のバランスでまとまっています。ここで10Ω程度インピーダンスがアップする「High Impedance」モードではより抵抗の増加により大幅に鳴らしにくくなり、バランスとしてはフラット方向に変化します。ただ明らかにサウンドチューニング自体は「Low Impedance」モードで行われている印象で、「High Impedance」モードでは抵抗によってバランスを強制的に変更しているような不自然さがあります。そのため以降のレビューでは「Low Impedance」モードをベースに記載します。
「Softears Volume S」(Low Impedanceモード)のサウンドはハイブリッドらしい各音域の主張のはっきりした明瞭感とスッキリした印象を持ち、同時にボーカル域は適度に温かみと滑らかさがある自然な印象です。低域はパッシブ振動板を追加することでニュートラルバランスを維持しつつインパクトが向上しており、オリジナルの「Volume」より洗練されたリスニングサウンドにアップグレードされています。
「Softears Volume S」(Low Impedanceモード)の高域は強めの主張のある明瞭な音を鳴らします。製品説明によると多少カスタマイズされているか別メーカー品である可能性もありますが、高域用BAには「WBFK」(Knowles WBFK-30095または相当?)が使用されており、上位モデルの「RS10」と同様のネットワーク回路で制御され、独立した音導管より出力される設計のようです。高域の伸びは良くはっきりとした煌めきのある音で、ハイハット等のシンバル音も明瞭に鳴ります。高高域も比較的主張があります。鋭い音は鋭く再生され、高域の刺激に敏感な方は一部で歯擦音などが気になる場合もあります。個人的には好きですが、刺激を抑えた聴きやすい高域を好まれる方には少し合わない可能性があります。
中音域はほぼ凹むことなく再生され、スッキリした明瞭で解像感のある音で再生されます。中音域も高域同様にカスタムBAである可能性はあるものの「ED」(Knowles ED-29689または相当?)と記載されたフルレンジユニットが採用されており、適切なチューニングにより心地よい主張と解像感と分離があり見通しの良い音を鳴らします。ボーカル域は前傾しており、女性ボーカルの高音のアクセントにより伸びやかさがあり、男性ボーカルも厚みがあります。特に男性ボーカルは強化されたダイナミックドライバー部で中低域を補完することで豊かさが増しており、余韻などをより実感しやすくなります。音像表現のディテールも詳細で、息づかいなどの細やかなニュアンスもしっかり実感出来ます。演奏との分離も良く、楽器の音色も鮮やかさがあります。音場は自然な広さがあり、ハイブリッドながら定位は正確な印象があり、リスニング寄りながらニュートラルな音作りにSoftearsらしさを感じる要素でもあります。
低域は全体としてニュートラルなバランスを維持しつつ、パンチ力のある音で存在感を向上し、「Volume」と比較してもディテールと質感が向上しています。ミッドベースは多少ブーストされており、より情報量が多く密度の高い印象ながらスピード感と締まりのある音を鳴らします。重低音は適度に温かみがあり深く沈み、全体的にスッキリした印象のサウンドに心地よい厚みと臨場感を加えます。
「Softears Volume S」では低域はチタンドーム&シリコンエッジ複合振動板の(アクティブ)ダイナミックドライバーと同じシャーシにウールベースのパッシブ振動板を搭載することで、自然な量感のままエネルギーを増し、よりインパクトのある低音を実現しています。
■ まとめ
というわけで、正直なところ「見た目買い」をしてしまった「Softears Volume S」でしたが、よりリスニング方向の明瞭サウンドを目指した音作りで、Softearsとしてのクオリティを維持しつつエントリークラスとしての位置づけをより明確に反映した製品に仕上がっているという印象でした。非常にクールな印象の外観も好感されるポイントでしょう。ただ319ドルという価格設定は、(USDベースでは)ほぼ同額の「Moondrop Blassing3」や、300ドル以下でも「THIEAUDIO HYPE2」や「DUNU DaVinci」、「ZiiGaat ESTRELLA」など非常に強力な競合製品の多い価格帯でもあります。私の場合、300ドル前後~、5万円台前後~のイヤホンは気がつくと結構購入しており(^^;)、過去に依頼を受けた製品も含めて、比較対象はわりと多いのですが、「Softears Volume S」については、音質面に関してはよくまとまってはいるものの、前作の「Volume」からのアップグレード感はそこまで大きくは無く、率直な印象としては同価格帯の中ではちょっとクラスオーバーな感じはあります。特に「Volume」の実質価格が下がっている現状では、「Softears Volume S」はそれなりに割高感が拭えない印象です。
特に、海外のレビューでも多く触れられていますが、「Softears Volume S」の最大の特徴であるインピーダンススイッチは、「High impedance」モードでは10Ωほど抵抗が増加することで音量の変化ははっきりと分かるものの、音質変化についてはむしろネガティブな印象が強くなります。
正直なところ、むしろプラグタイプの10Ωアッテネーターを使用するほうがまだバランス的にも良いのでは、という気がします(10Ωアッテネーターは要するに「Truther ZERO:RED」に付属してるアレですね)。ならばこのギミックを無くして、音質アップとデザイン変更のみで少しクラスを下げた方が販売数は増えたのでは、と感じます。というわけで、デザインの良さに対して諸々による「割高感」がたぶん足かせになってそうな製品ではありますが、今後セールなどでプライスが落ち着いてくれば急浮上する可能性もあります。特にニュートラルバランスで高域がしっかり伸びるイヤホンを好まれる方には良い選択肢のひとつだと思いますよ。









