F.AUDIO M20

こんにちは。今回は 「F.AUDIO M20」です。DACチップに同クラスの小型DAPとしてはハイグレードの「ES9039Q2M」を搭載し、4.4mmバランス接続、低ノイズ設計&最大650mWの高出力に対応。さらにUSB-DACや双方向のBluetooth対応など、約100ドルの価格設定ながら専用OSタイプのDAPとして全部入りを実現したマニア向け中華DAP(デジタルオーディオプレーヤー)です。

■ 製品概要と購入方法について

「F.AUDIO」は、コストパフォーマンスに優れたDAP(デジタルオーディオプレーヤー)やドングル型のオーディオアダプター製品をリリースしていている中華ブランドです(カスタムIEMやイヤホンを手がける「FAudio」とはたぶん無関係です)。
今回の「F.AUDIO M20」は小型DAPとしてはハイグレード仕様のESS「ES9039Q2M」DACチップを搭載し、デュアルヘッドホン出力(3.5mmシングルエンドと4.4mmバランス)に対応した、高性能と洗練されたデザインを融合させたポータブルミュージックプレーヤー兼USB DACです。
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F.AUDIO M20」は360×640ピクセルのタッチスクリーン機能付き3.0インチIPSディスプレイを搭載。DACチップにはESS「ES9039Q2M」を搭載。32bit/768kHz PCMおよびDSD256ネイティブ再生に対応します。さらに先進的な内部アーキテクチャを採用し、超低歪み、高い信号対雑音比(SNR)、そして卓越したダイナミックレンジ性能を備え、ピュアで高忠実度のサウンド体験を提供します。
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またレシーバーおよびトランスミッターの双方向のBluetooth機能を搭載し、AAC、SBC、AptX、AptX HD、AptX LLなど、複数の高品質伝送プロトコルに対応します。
さらにデュアル仕様のアナログ増幅回路を搭載し、3.5mmシングルエンドに加え、4.4mmバランス接続に対応します。バランス接続では最大650mWの出力を実現し、さらに2段階のゲインモードにより、高感度ヘッドホンから高出力ヘッドホンまで最適なパフォーマンスを実現します。
そして、「F.AUDIO M20」はUSB-DACとしても機能し、USB Type-Cオーディオ出力を介してPC、スマートフォン、ノートパソコンなどのデバイスとシームレスに連携できます。USB-DACモードではDSD128出力をサポートします。
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F.AUDIO M20」は3000mAhの大容量バッテリー容量を搭載し、シングルエンド出力では最大16時間、バランス出力では最大13時間の長時間再生が可能です。ストレージメディアはmicroSDXCにも対応し数多くのオーディオフォーマットに対応します。

F.AUDIO M20」の主要な諸元は以下の通り。

ModelM20
DACESS ES9039Q2M
Support32bit/768kHz PCM / 
DSD256, 
8 modes Filter
FormatWAV, FLAC, ALAC,
MP3, M4A, DSD,
APE, CUE, ISO
Output3.5mm シングルエンド
4.4mm バランス出力
[Power]
2Vrms
 (3.5)/ 4Vrms (4.4)
[Low Gain]
320mW (3.5) / 445mW (4.4)
[High Gain]
480mW (3.5) / 650mW (4.4)
SNR
THD+N
[SNR]
115 dB (3.5) / 117 dB (4.4)
[THD+N]
0.0011% (3.5) / 0.0013% (4.4)
Bluetooth5.0 (双方向)
AAC、SBC、aptX、
aptX HD、aptX LL
USB-DACXMOS UAC2.0, UAC1.0
/ PCM, DSD(DoP)
StorageTF card(miscoSDXC対応)
Display3.0inch (360×640) IPS
Battery16hours (3.5) / 13hours (4.4)
Size92 x 59 x 17 mm, 145g

F.AUDIO M20」の価格は109ドルです。購入はAliExpressなどの各セラーにて。
※なお、本製品は技適未取得のためBluetooth機能は日本国内では使用できません(実証には自己責任で特例申請等が必要です)。

AliExpress(Moyoule Audio Store): F.AUDIO M20 ※5月18日までセール価格 86.98ドル


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Sweet Audio より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

というわけで、ネット上でもとにかく情報の少ない「F.AUDIO M20」ですがパッケージは無地の黒箱に本体と充電用ケーブルのみのシンプルな内容。あれ、サイトにはマニュアルも・・・まあ筋金入りの「中華DAP」ですので、そういうこともあるようです(汗)。
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本体はアルミニウム合金製でサイズは92×59×17.5mm、145gと非常にコンパクト。画面は3インチのタッチスクリーンですね。上面に3.5mmと4.4mmの出力があり、3.5mmは設定によりヘッドホン出力(PO)とラインアウト(LO)を切替えることができます。
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下面はUSB Type-Cのインターフェースのみ。充電およびUSB-DACモード時の接続ポートを兼用します。通常は充電用でPCやスマートフォンにUSB OTGケーブルで接続時に画面上にモード選択が表示される仕組みです。

操作ボタンは左側側面に集中しており、ボタンは3つ。音量ボタンは二重押しで送り/戻しボタンとして機能します。microSDカードスロットはmicroSDXC 1TBまで対応しますが、リードが遅く今回試した512GB(SDXC)でも結構待たされる印象。また1TBなどのメディアは多少相性があるため、128GBや256GBくらいのメディアを使用する方がよさそうです。
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なお、「F.AUDIO M20」のドライバー、マニュアル、ファームウェアなどはいろいろ調べてみるとBaiduサイトに掲載されているとが確認出来ました。
https://pan.baidu.com/s/19G7NT1Hw7BE43Hp5cWcp1A?pwd=6666(パスワード 6666) 
ただ日本からのダウンロードでは必要なBaiduのアカウントの取得が難しかったり、迂回するサービスを利用する場合も有償だったりと多少ハードルが高めです。必要な方は「Baidu Drive 日本からダウンロード」などで検索してみてください。
今回サンプルで届いた製品はファームウェアバージョンが「V1.13」だったのですが、動作に多少不安定さを感じたので上記から何とか入手し、掲載時で最新の「V1.14」(20250331)にアップデートしました。


■ インプレッション(操作性、音質傾向など)

本体は左側側面の電源ボタンで起動します。専用OSですので起動時間自体はそれほど遅くはありませんが、起動時に表示されるロゴマークが結構もっさりと表示されるので、まあ動きは機敏ではないだろうな、とその時点で感じさせます。実際、全体のスクロールはやはり結構もっさりした印象で機敏さはありません。ただタッチスクリーンの反応は良好のため慣れれば思ったほど操作にストレスを感じることは少ないかもしれません。
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画面表示については開封時は当然中国語表示ですが、設定画面の言語選択で変更ができます。英語などのほか日本語も選択可能です。ただし日本語は直訳表示で、「中華DAPあるある」ですがむしろ日本語表示のほうが何を書いてあるかよくわからん、みたいなこともなきにしもあらず。というわけで最終的には英語表示に変更しました。なお、英語表示でも日本語のファイル名や曲名は文字化けせずに日本語フォントで表示されるため使用上は特に問題はありません。
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ゲイン(Hgh/Low)、再生方式(ノーマル、1曲リピート、全曲リピート)、3.5mm出力(PO/LO)などの変更も全て設定画面で行います。なおこれらの再生項目は再生画面からも直接設定項目に移動して変更が可能です。細かいところではTFカード(microSD)の種類選択、USB-DAC接続時の給電設定などの項目があるのが興味深いですね。他にもイコライザーや8種類のデジタルフィルターなども搭載しています。
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DAPとしての音楽再生はリスト画面から再生する曲を選びます。microSDXCカードはあらかじめスキャンしてライブラリを作成する方式で、アルバムやアーティスト名のほか、もちろんフォルダに直接アクセスしてファイルからの再生も可能です。
リスト画面の作り込みがチープで昔のガラケーの画面みたいなのはご愛敬ですね(^^;)。
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音楽再生画面ではファイル情報やカバーアートなどを切替えて表示ができます。下のアイコンでプレイリスト、イコライザ、各種設定(ゲイン、リピート方式、3.5mm出力方式)などの画面に直接アクセスもできます。この辺は結構ちゃんと作られていて操作性で違和感は少ないですね。

F.AUDIO M20F.AUDIO M20」の音質傾向はニュートラルで癖の無い印象ながらやや温かみを感じるちょっと暖色系の印象。デジタルフィルターの設定等により多少印象が変わる可能性もありますが、ボーカル曲を中心とした利用では結構使いやすい印象では、と思います。
またボリューム幅が広く、2種類のゲイン設定もあるため、Lowゲインでは敏感なイヤホンもほぼノイズは無く、またHighゲインでは鳴らしにくいヘッドホンなどにも十分に駆動することができます。いわゆる解像度重視のエッジの効いた印象では無いですし、ノイズは少ないものの高級DAPのような透明感やフラットな印象とも異なりますが、気軽なリスニング用途では100ドル程度の価格設定を考慮すると十分な音質だろうと思います。むしろ多少リスニング向けのチューニングで使いやすく感じる方の多いかもしれませんね。

さらに「F.AUDIO M20」はUSB-DACモードと双方向のBluetooth機能を搭載しています。
USB-DACモードは電源OFFの状態でUSB-OTGケーブルを使用してスマートフォンやPC、Macなどに接続すると起動時にモードを選択する画面が表示されます。ここで「XMOS」を選択することでUAC2.0(USB Audio Class 2.0)接続でのUSB-DACとして動作します。なお、ゲーム機などUAC2.0に対応しない機器では「UAC1.0」を選択します。
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「USB-DAC」モード時は専用モードになるため画面上の操作は再生/停止などのみになります。またDSDはDoP(DSD over PCM)再生となるため、最大DSD128までの対応となります。

そしてBluetooth機能については双方向(レシーバー、トランスミッター)に対応します。
なお「F.AUDIO M20」はレビュー時点では技適認可を得ていないため、Bluetooth機能を日本国内では利用できませんが、今回はレビューのための検証目的で総務省の「電波利用の特例申請」を行いました。以下はそのうえでの検証内容となります。

Bluetooth機能では設定画面で利用するコーデックを選択します。「F.AUDIO M20」では双方向でaptX HDやaptX LLの高音質コーデックに対応します。最近のaptX Adaptiveには対応しませんが下位互換でaptX HDが使用できるワイヤレスイヤホンも多いため、組み合わせにより高音質で楽しめると思います。
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またレシーバーとしてもaptX HDに対応するためスマートフォンのワイヤレスアンプとして使用してストリーミングを再生するなどの使い方ももちろん可能です。
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これらの動作も(ファームウェア1.14では)全般的に安定しており普通に使える印象。是非とも技適を取得して日本でも普通に使えるようになって欲しいですね。


■ まとめ

F.AUDIO M20というわけで、今回は久々にちょっとマイナーな中華DAPを紹介してみました。「F.AUDIO M20」は現時点では技適の問題などがありBluetooth機能は利用できないものの、DAPおよびUSB-DACのみの利用でも100ドル程度の価格設定としては十分な機能と音質を持っていると感じました。
またシングルエンドでも最大480mW、バランスで650mWの出力は小型DAPとしては十分にパワフルで、一般的なドングル型オーディオアダプターでは駆動力不足を感じていた方にも十分な出力を提供します。さらにノイズ特性も高く、数年前と比べるとクオリティが向上しているなぁと実感します。そしてAndroidではない専用OSのDAPのためバッテリー稼働時間が長いのも魅力のひとつですね。いろいろ不親切な部分もあるため基本的には分かっている方向けで、自己責任で、という製品ですが、機能についてできるだけ詳細に記載しましたので、もし検討されている方は参考にして頂ければ幸いです。