
こんにちは。今回は 「Kiwi Ears Astral」です。1DD+6BAのハイブリッド構成で約300ドルのミドルグレード製品です。モニター的なバランスをベースにしつつエネルギッシュな低域や各音域の質感を高めることで絶妙に心地よいリスニングサウンドに仕上がっています。
■ 製品概要と購入方法について
「Kiwi Ears」は2021年に登場した新しい中華イヤホンのブランドですが、非常に早いペースで新製品を投入しており急速に知名度が高まっていますね。同社のイヤホン製品は豊富なラインナップと質の高いサウンドで多くのマニアから注目を集めています。
「Kiwi Ears Astral」は、1DD+6BA構成のハイブリッド構成によるプロフェッショナルグレードのIEMで、プレミアムなオーディオ解像度と優れた音質バランスを提供するように設計されています。「Kiwi Ears Astral」は、正確さや精度を犠牲にすることなく魅力的なリスニングサウンドを実現しています。


「Kiwi Ears Astral」は、自社開発による10mm バイオセラミック振動板ダイナミックドライバーを使用しています。このドライバーは9dBの重低音を特徴としており力強い低域を実現しています。さらにドライバーの特性に合わせたベースチューニングには300Hzのローリングカットオフが含まれており、中域への自然な流れを実現します。
また中音域用に2基の自社カスタムによるデュアル・バランスドアーマチュア(BA)ドライバーを搭載(合計4BA)。ボーカルや楽器の音色を正確に再現するニュートラルなミッドレンジに焦点を当てるように設計され、スタジオモニターに近いサウンドを忠実に再現します。


そして高域用には2基のツイーター用BAドライバーを搭載(2BA)。SWFKユニットをカスタマイズして、よりスムーズな超高周波数の高音域レスポンスを実現しています。丁寧に設計された高音域は2.8kHzでピークに達し、15kHzまで均一にロールオフすることで、きらめき、空気感、そしてステージ上での広がりを与え、リスニング体験全体を格段に向上させます。他のタイプのドライバーに比べて高音域の伸びが良く、駆動効率が高いため、優れたパフォーマンスを実現します。


「Kiwi Ears Astral」の価格は299ドル、アマゾンでは46,200円です。
カラーバリエーションは「ブルー」と「イエロー」の2色から選択できます。
Linsoul(linsoul.com): Kiwi Ears Astral
AliExpress(Linsoul Audio Store): Kiwi Ears Astral
Amazon.co.jp(LINSOUL-JP): Kiwi Ears Astral
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Linsoul より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
今回はイエローカラーで届きました。「Kiwi Ears Astral」のパッケージは最近の「Aether」などのデザインを踏襲していますが、より上位モデルと言うことで少しボックスは厚みがあります。


パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、交換用プラグ、交換用メッシュパーツ、イヤーピース(S/M/Lサイズ)、ケース、説明書。


本体は3Dプリントによるレジン製で1DD+6BAという構成もあってシェルサイズはやや大きめ。フェイスパネルはゴールドのラメ模様で、ブルーを選択するとサファイアカラーの模様になるようですね。


大きめのシェルサイズですが耳にフィットしやすいデザインで装着性は良好。ただステムノズルが太く、イヤーピースも軸部分の穴が大きいタイプが付属します。ある程度開口部が大きいイヤーピースであれば使用できると思いますが耳穴の小さい方は少し注意が必要かもしれませんね。


ケーブルは若干青みがかったグレーの4芯ケーブルが付属します。コネクタおよびプラグ部品はアルミ製でブロンズカラーの落ち着いたカラーリング。3.5mmと4.4mmのプラグ交換に対応します。線材の被膜は適度な弾力がありしっかり編み込まれているため取り回しは良好で使いやすい印象です。
■ サウンドインプレッション

また音場は自然な広さを持ちつつ上下ののびや前後のレイヤー間があり包み込むような空間表現が非常に心地よい印象です。ニュートラルベースのリスニングイヤホンとしては質の高い仕上がりだと思います。インピーダンス23Ω、感度105dB/mWで比較的鳴らしやすく、再生環境にあまり影響しないものの、リケーブルでの変化は結構ある印象。逆に高出力の環境でも特に歪むこと無く再生されます。

中音域はやや前傾するボーカル域を中心に凹むこと無く再生されます。音色は癖の無いフラット方向にニュートラルな印象ですが、透明感が高く見通しも良いため不足を感じることは無いでしょう。
ボーカル域はU字傾向のバランスで自然な範囲で前傾し、女性ボーカルの伸び感や男性ボーカルの厚みも心地よく表現されます。マルチBAによる明瞭感のある印象ながら寒色になりすぎず、自然な温かみと滑らかさ、そして豊かさがあります。

音場は原音に忠実な自然な広さで表現されるものの上下の空間の伸びの良さと立体的な前後のレイヤー感が有り、包み込むような空間表現で聴き応えのある印象です。
「Kiwi Ears Astral」は全体として存在感のある中音域ですが、あくまで自然なバランスで過度にミッドセントリックな印象では無く、アプローチとしては原音に忠実に表現しつつ中音域全体をしっかり捉えている感じですね。
低域はニュートラルなバランスながら重低音を中心に力強く鳴ります。しっかりした存在感があり多少中低域寄りに感じるエネルギッシュさで、「Kiwi Ears Astral」をよりリスニング的な印象のサウンドに引き立たせています。重低音は深く沈み、厚みと重量感、そして底から突き上げる存在感を与えます。

心地よいリスニングという視点では轟音上映の映画館のような臨場感のあるサウンド、という印象ですが、それこそ分析的なリスニングを好む方はもう少しタイトに制御して欲しいと感じる可能性があります。この辺が「Kiwi Ears Astral」のキャラクターを分けるポイントとなりそうです。
■ まとめ

このクラスの製品はどれもメーカーが目指した特徴があり、正直なところ良し悪しと言うよりは、ほぼ「好みの世界」だとは思います。その中で「Kiwi Ears Astral」はスペックや技術的に突出した特性を持つわけではありませんし、音質傾向としても際立って特徴がある、という印象でもありません。
あえて区別するなら「同クラスの中でも特に絶妙な聴き心地とグルーヴ感が特徴的」なイヤホン、という感じでしょうか。もし好みに刺さればかなり楽しい製品となるかも、と思いますよ。