NF ACOUS NA20

こんにちは。今回は 「NF ACOUS NA20」です。個人的にも「NF ACOUS(旧「NF Audio」)を「推す」きっかけとなった「NM2」「NA2」などのラインの正統後継モデルにさらに新機種が登場しました。「NM2」後継の「NM20」につづき、今回は「NA2」の後継となります。ニュートラルバランスながらよりリスニング性を高めたチューニングで、最新ドライバーによる優れた音質をお手頃価格で楽しめるイヤホンです。

■ 製品概要と購入方法について

NF ACOUS」(旧ブランド名「NF Audio」)は中国国内ではCIEMメーカーとしても知られる、2014年設立の古株の中華イヤホンのブランドのひとつとです。私のブログでも「NM2」「NM2+」、そして最新の「NM20」などの「Professional」シリーズや、「NA2+」や最近の「RA15」などの「MUSIC」シリーズの製品をレビューしてきました。

今回の「NF ACOUS NA20」は同社の「MUSIC」シリーズの新モデルで、「NM2」の後継の「NM20」同様に、「NF ACOUS NA20」は「NA2」の正統な後継機としてリリースされました。
NF ACOUS NA20」では新たに第2世代の「MC2L-100M」ダイナミックドライバーを搭載。「NA2」に搭載された「MC2L-10」と比較し全面的にアップグレードされています。「MC2L-100M」では軽量かつ剛性の高いベリリウムメッキ振動板を搭載し、2つの高性能ネオジム磁石によるデュアル磁気回路設計を採用。さらにリアキャビティには「NF ACOUS」の特許技術である「Clutter Trap」を採用し、ヘルムホルツ共鳴原理に基づいて設計された5つの空気圧制御ダンピングネットと 2つのチューニングスポンジにより、反射音を減らし正確なサウンドリファレンスを提供します。
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また、「NF ACOUS NA20」ではハウジング形状を更に一新し、さらなる快適な装着性を実現。また最大25dBのパッシブアイソレーション設計を採用し、効率的な遮音性を持っています。シェルは「NA2」同様に高強度ポリカーボネートを採用しつつ、さらにフレームにCNC航空グレードアルミニウムを採用し、より高級感あるデザインへと生まれ変わりました。
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そしてイヤーピースには「NF ACOUS」独自の「MS42」高機能イヤーチップを付属。快適な装着性と良好な音響特性を持ちXSサイズを含む4種類のサイズを同梱。ケーブルはより高純度の6N-OFCケーブルを採用しています。
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NF ACOUS NA20」の市場予想価格は17,800円(税込)です。

Amazon.co.jp(伊藤屋国際): NF ACOUS NA20


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして 伊藤屋国際様 より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

NF ACOUS NA20」のパッケージは黒地にイエローのロゴデザインとオレンジのアクセントが印象的な正方形のボックス。今回もNF ACOUS製品のパッケージの特徴を踏襲しロゴタイプなどとてもクールなデザインですね。
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パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、イヤーピース(「NF AUDIO MS42」イヤーピース、XS/S/M/Lの4サイズ)、6.35mm変換コネクタ、ハードケース、説明書。「NM20」同様に6.35mmジャックへの変換コネクタも付属します。
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NF ACOUS NA20」の本体はポリカーボネート製の樹脂シェルにフェイス部分のフレームとステムノズルはアルミ製の軽量かつ強度と高級感を両立した仕上がり。「NM20」同様に採用されたポリカーボネートは一般的なABS樹脂と比較して強度が高く割れにくいためプロ用のハードな利用でも高い耐久性を持っています。シェル形状は従来の「NA2」を踏襲しつつデザインは一新しており、サイズ的には一般的なカナル型のイヤホン(KZやTFZの過去モデルなど)に近いデザインですが実際はひとまわり小さく、より耳に収まりやすい形状になっています。
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NF ACOUS NA20」のシェルデザインは「NM20」を踏襲しており、外観上は本体カラー、ゴールドのフレーム及びステムノズル、そしてプリントされたロゴ、といった感じ。そのため装着性は非常に良く、付属の「MS25」イヤーピースとの組み合わせで遮音性も高く(製品説明では-25dBだそうです)快適に利用できます。
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コネクタはqdcタイプとカバー形状に互換性のある0.78mm 2pinタイプを採用。既存の「NA2」および「NM2」と比較してコネクタ部分が本体に直接接続され剛性が増しているとのことです。
NF ACOUS NA20」を既存の「NA2」および「NA+」と比較するとシェルのサイズ感はほぼ同じですが、フロントキャビティ(耳への装着面)部の突起がなくなりそりソフトな装着性となっているのが分かります。また本体の表面処理もより手が込んでいるのが分かりますね。
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イヤーピースは独自の「MS25」イヤーピースが付属し、ハードケースも付属します。個人的には「MS25」イヤーピースはXSサイズも入っていたのが有り難いですね。適度に弾力がありフィット感も良好な印象です。ただしイヤーピースがやや短いタイプのため、耳が大きい方の場合長さが足りない場合もありますので、必要において最適なものを選ぶのが良いでしょう。
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ケーブルはブラウンの撚り線タイプで、線材は「NA2」のケーブルよりグレードアップし、6N-OFC(高純度無酸素銅)線を採用しているようです。柔らかく取り回しの良いケーブルです。


■ サウンドインプレッション

NF ACOUS NA20NF ACOUS NA20」の音質傾向は「Professional」シリーズの「NM20」の傾向をある程度踏襲しつつ、重低音がより強調され、逆に高域は多少穏やかに調整されている印象。全体としては「NF ACOUS」のモニター的な音作りをベースにした癖の無いニュートラル傾向のサウンドながら、「MUSIC」シリーズとして、よりボーカル域に温かみを感じ、リスニング性を高めた印象で仕上げられています。f値的には「NA2」のような滑らかなV字を描く傾向を踏襲しており文字通り「正統な後継」として調整されている印象ですね。

「NM20」が「NM2」を踏襲し、ある程度スタジオモニター等の用途も意識した調整だったのに対し、「NF ACOUS NA20」はポップスなどの音源との相性がより向上しており、低域の厚みを増し刺激を抑えることで音場感も向上し、リスニング的にも没入感を得やすいサウンドになっています。いっぽうで「NA2」などの過去のモデルと比較しアップグレードされたドライバーユニットの搭載により、
「NM20」同様に見通しの良さや解像感は向上しており、より詳細なディテールを捉えやすくなっている印象です。同時にベリリウムコートの振動板を採用したことで過度にエッジが立つことも無く、粒立ちの良さと自然な滑らかさを両立しています。

NF ACOUS NA20NF ACOUS NA20」の高音域は「NM20」ほどの明るさでは無いものの、明瞭で見通しの良さを感じる音で再生されます。よりドライではっきりした音やさらにモニター的な高音域を望まれる場合は「NM20」のほうが好印象となりますが、特にリスニングを中心に考慮した場合は、適度に艶があり滑らかを持った「NF ACOUS NA20」の高域に好感を得るでしょう。適度なエネルギーを持ちながらも歯擦音などの刺激をコントロールしており、優れた解像感により風通しが良く、1音1音を詳細に捉えます。同時に滑らかさと僅かな温かみも感じさせます。

中音域はリスニング仕様の「NA2」をよりブラッシュアップし、「NF ACOUS NA20」ではより正確な定位感と詳細な解像感、そして癖の無いニュートラルな音像表現を獲得しました。同時に「NM20」と比較しより温かみがあり、豊かで厚みがあります。
NF ACOUS NA20よりリスニング的な調整のためV字感が増した印象もあるため、ボーカルは「NM20」ほど前傾せず、自然な距離感で定位しますが、見通しに優れ、また弾性ボーカル、女性ボーカルともより豊かで厚みがある印象のため不測に感じることはありません。中高域はスッキリとした伸びやかさがあり、中低域は厚みがあります。また音場感は「NF ACOUS NA20」のほうが広さおよび奥行きにおいて自然な広がりがあり、演奏も自然な定位で再生されます。ただし、音像は自然で滑らかですが、キレの良さや特に音数の多い場合の分離感などは「NM20」や既存の「NM2+」「NA2+」といった上位モデルにはおよばない印象です。

低域はニュートラル方向のバランスを維持しつつ、重低音を中心に多少ブーストされており、よりリスニング的な臨場感や没入感が向上しています。「NM20」の低域もキレ重視という印象では無くミッドベースを中心に自然な音像表現と締まり感ながらより詳細に描写している、という印象でした。
NF ACOUS NA20これに対し「NF ACOUS NA20」では同様のミッドベースに加え、さらに重低音の厚みが増すことで、全体として適度な温かみと音楽的にエモーショナルな聴き応えを与えています。
ミッドベースは前述の通り自然な音色ながら適度にタイトで中高域との分離も良く直線的な印象を与えます。重低音は深さと厚みが増しており、ベリリウムメッキ振動板らしい解像感とスピード感があります。ただしパンチ力や重量感という意味ではさらにドンシャリ傾向のイヤホン程では無く、あくまでニュートラルサウンドの範囲内での調整で仕上げられている点は留意すべきでしょう。


■ まとめ

NF ACOUS NA20というわけで、「NF ACOUS NA20」は「NM20」の優れた特徴をしっかり踏襲しつつ、よりリスニング性に優れたイヤホンとして手堅くまとめられていました。既存の「NA2」はちょっとポジショニングが曖昧で、モニター的な「NM2」との比較が難しく、また上位モデルとしてその後リリースされた「NM2+」「NA2+」などが評価される中で多少マイナー感が否めない印象でした。しかし今回は先に「NM20」がリリースされ、そのフィードバックをある程度受けられる状況での「リスニングモデル」としての登場と言うことで、ちょっとだけ「本命」ぽさも感じる存在になっているかもしれません。実際ニュートラル方向のリスニングサウンドとしての完成度は高く、100ドルちょっと、1万円台の価格設定はとても手頃な印象だと思います。またポリカーボネート製のシェルは見た目以上に耐久性もあるため、屋外でガンガン使う実用的なイヤホンとしても幅広くお勧めできる製品だと感じました。