こんにちは。今回は 「TANCHJIM FISSION」です。高音質なイヤホン製品を数多く手がける「TANCHJIM」の新しい100ドル級モデルです。以前の「4U」を全方位でアップグレードし、より上位の「ORIGIN」にも匹敵するような音質を実現するなどかなり魅力的な製品に仕上がっています。
■ 製品概要と購入方法について
「TANCHJIM FISSION」は以前レビューした「TANCHJIM 4U」のアップグレードモデルですね。「TANCHJIM」（タンジジム）は2015年に設立された中国のイヤホンメーカーで、科学的な解析やロジックに裏付けられた専門性の高い調整によるニュートラルでバランスのよい音作りとシンプルな製品デザインでファンも多いブランドです。
「TANCHJIM FISSION」は軽量アルミニウム合金製シェルにドライバーに最新の第5世代ドライバーユニット「DMT5」を搭載。自然な音色で、クリアで明瞭なサウンドレスポンスを実現します。また「TANCHJIM FISSION」には、交換可能なノズルが3セット付属し、シェルには「4U」同様の4段階のチューニングシステムが搭載されています。これらを組み合わせることで、12種類の独自のサウンドプロファイルを設定可能です。
「TANCHJIM FISSION」のシェルはCNC加工した高品質のアルミニウム合金製で「4U」および「Bunny」と同様のミニマルなデザインを採用しています。CNC加工された真鍮製のフェイスプレートは内面に刻まれた溝により音の共鳴を抑制し、FEAシミュレーション技術を用いて最適化しています。
またDWRコーティングを施した防水音響フィルターを搭載。よりスムーズで自然なサウンド再生を実現します。
「TANCHJIM FISSION」のシェルはCNC加工した高品質のアルミニウム合金製で「4U」および「Bunny」と同様のミニマルなデザインを採用しています。CNC加工された真鍮製のフェイスプレートは内面に刻まれた溝により音の共鳴を抑制し、FEAシミュレーション技術を用いて最適化しています。
またDWRコーティングを施した防水音響フィルターを搭載。よりスムーズで自然なサウンド再生を実現します。
「TANCHJIM FISSION」のドライバーには自社開発による第5世代DMTテクノロジーを採用したダイナミックドライバーユニットを搭載。二重磁気回路を採用し、高い磁束、低歪み、力強いダイナミクス、そして優れた効率性を実現しています。複合振動板はFEAシミュレーションによるサラウンド曲率を備え定の低周波数帯域で最適な振動を実現し、クリーンな出力を実現します。
「TANCHJIM FISSION」はシェル本体に「4U」でも採用された4段階調整可能なダイヤルを搭載。「Pop」「Default」「Monitor」「Natural」の各モードに切り替えることが可能です。さらに交換可能なチューニングノズルを採用し、3種類の素材と内部構造の異なるノズルを備えています。「真鍮ノズル（C）」は暖かく滑らかな音色を、「チタンノズル（T）」はよりシャープで詳細な高音を、「ステンレスノズル（S）」はニュートラルでバランスの取れたサウンドを提供します。4段階ダイヤルと合せて合計12種類の組み合わせによるサウンドプロファイルを楽しめます。
ケーブルには銀箔シールドを施したリッツ銅銀メッキケーブルを採用し、交換可能なプラグは3.5mm、4.4mm、DSPチップを内蔵したType-Cプラグが付属します。
「TANCHJIM FISSION」の価格は129.99ドル、アマゾンでは19,999円です。
Amazon.co.jp（HiFiGo）： TANCHJIM FISSION
AliExpress（HiFiGo Store）： TANCHJIM FISSION
HiFiGo（hifigo.com）： TANCHJIM FISSION ※掲載時116.99ドル
免責事項：
本レビューではレビューサンプルとして HiFiGo より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「TANCHJIM FISSION」のパッケージは正方形のボックスで「4U」のデザインを踏襲しアップグレードモデル感があります。パッケージデザインは「KARA」や「ORIGIN」のように製品画像を大きく載せたタイプになっています。
パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、交換プラグ（3.5mm、4.4mm、Type-C）、交換用ノズルフィルターおよび固定プレート、イヤーピース（2種類、3サイズ）、スイッチ切り替え用工具、布製ポーチ、説明書、保証書など。
「TANCHJIM FISSION」の本体はCNC加工されたアルミ合金製。鋳造（ダイキャスト）の「4U」より軽量かつ美しい仕上がりになっています。真鍮製フェイスプレートはガラスプレートで覆われており、「4U」よりかなり手の込んだ仕上がりになっているのがわかります。
サイズ感および形状は「4U」を踏襲しており、本体は非常にコンパクトで耳への収まりも良く装着感は良好です。サイズ的には最近のDMT5ドライバー搭載の「ORIGIN」に近く、DMT4仕様の「HANA」や「Oxygen」と比べると「TANCHJIM FISSION」はこれでもひとまわり大きいサイズ感だったりします。
また「TANCHJIM FISSION」では3種類のノズルフィルターが付属します。標準では「ステンレスノズル（S）」が装着されており、「真鍮ノズル（C）」は多少ウォーム寄り、「チタンノズル（T）」はより寒色系で高域の伸びが向上します。
本体背面のロータリースイッチは付属のマイナスドライバーを使って回転させることで変更できます。内部のPCB基板からの電気制御により出力をコントロールする方式ですね。通常のスイッチより耐久性があり確実に変更できるのは良いですね。またステムノズル先端は汗などの水分にも強い防水タイプのメッシュフィルターで覆われており、全体的な耐久性も確保されています。
ケーブルは繊維被膜の2芯タイプで「4U」より外観も大幅にグレードアップしています。コネクタは3.5mm、4.4mm、Type-Cの3種類が付属。Type-CはDSPチップを内蔵しています。コネクタは埋め込みタイプの2pin仕様ですが、溝は浅いためいわゆる中華2pinタイプのケーブルでもリケーブルは可能です。
■ サウンドインプレッション
「TANCHJIM FISSION」のサウンドは全てのフィルターを通してニュートラルなバランスで調整されておりそのなかで低域および高域のチューニング、ボーカル域の温かみなどを微調整可能なイヤホンという印象です。標準のステンレスノズルおよび「Default」フィルターの状態ではU字に近い弱ドンシャリで印象として「4U」と比較的近いバランスで調整されています。さらに「TANCHJIM FISSION」ではドライバーの世代が進化することで音像表現、解像感、透明度、音場感などさまざまな側面でアップグレードを実感することができます。「TANCHJIM FISSION」は「4U」からの正統な上位モデルという感じですね。
さらに標準ノズルでの各フィルターでのサウンドは上位モデルで同じ第5世代ドライバー（DMT5）を搭載する「ORIGIN」と比較しても遜色無く、半分以下の価格でこのサウンドを実現し、さらに豊富なオプションを持つ「TANCHJIM FISSION」の進化をより大きく実感します。
「ORIGIN」は個人的にもかなり好きなイヤホンのひとつですが、ステンレス製で重量があり、屋外などで気軽に使うには多少躊躇する製品でもありました。それに対してアルミ製の「TANCHJIM FISSION」は長時間のリスニングにおける疲労感もかなり少なく、より気軽に高音質を楽しむことができます。もちろん「ORIGIN」のステンレス製ゆえの剛性の高さによる硬質でカチッとした印象は「TANCHJIM FISSION」では得られないメリットではありますが、単純にドライバーの性能やチューニング自体は両製品は同等レベルでは無いかと思います。内蔵される4段階のチューニングスイッチは「4U」で搭載された同様の機能を踏襲しており、ｆ値的には主に中低域～低域の量感に影響します。標準（「Default」または「Atmosphere」モード）を基準として、「Default（Atmosphere）」＞「POP」＞「Natural」＞「Monitoring」の順で低域が抑え気味に変化し、最も量感が少ない「Monitoring」モードでは多少中高域寄りながらほぼフラットに近いサウンドになります。
またノズルフィルターは主に中高域から高域に影響し、標準の「ステンレスノズル（S）」に対し、「真鍮ノズル（C）」は高域の伸びを少し調整することでボーカル域や中低域を中心に若干ウォーム寄りに変化し、「チタンノズル（T）」はより寒色系で全体的にキレ感が増し、バランスとしては高域の伸びが向上します。通常は「ステンレスノズル（S）」を基準として、好みに応じて交換してみるのも良いでしょう。
どちらのフィルターも共通しているのは、どのモードでも音質傾向としての破綻は無く、ちゃんと安定したまとまりを持っている点は一般的なノズル交換式やスイッチ式のイヤホンと比較しても特筆すべきでしょう。TANCHJIMの技術力の高さを実感させられます。
「TANCHJIM FISSION」の高域は明瞭かつ伸びのある音を鳴らします。「4U」より鮮やかさがあり、解像感や音場感も確実に向上しています。ステンレスノズル（S）やチタンノズル（T）での印象は「ORIGIN」の高域とも結構近く、結構あっさりした印象の「4U」より情報量が多くエネルギーを持っています。また高高域はより滑らかで見通しも良い印象です。真鍮ノズル（C）では多少ウォーム方向に変化するため、再生環境によって他のフィルターで刺激を感じる場合は聴きやすく感じる可能性があります。このフィルターでもスピード感や分離感は維持されます。
中音域は凹むことなく鳴り、癖の無いニュートラルな音像表現で再生されます。高域同様に伸びが良く有り見通しも良い印象ですが、しっかりした主張があり、ボーカル域を中心に前傾し比較的近くに定位します。中音域ついてはノズルフィルターでの変化は少ないものの真鍮ノズル（C）はより温かみが、チタンノズルでは逆に寒色系のキレの良さを感じやすくなります。
スイッチでは「Monitoring」モードはほぼフラットな印象で再生され、「Natural」では若干低域が増すことで印象としてはより自然に感じます（製品説明では「原音忠実」モード）。「4U」ではこの2種類のモードではちょっと解像感や分離的に厳しく感じた部分もありましたが、「TANCHJIM FISSION」では十分に実用的で質の高い音を鳴らしてくれる印象です。なお、「POP」モードでは少しW字方向の傾向となり、相対的に女性ボーカルの高域付近のアクセントが強調されます。リスニング的には「Default（Atmosphere）」モードが最もハーマンターゲットに近いU字傾向で、多くの場合は好印象を持つと思います。「TANCHJIM FISSION」の中音域は高域同様にエネルギーがあり、ニュートラルバランスながらボーカルも演奏も活き活きとした力強さがあります。そのため適度な鮮やかさがあり、リスニング的な聴き応えを感じさせます。同時に音像表現そのものに誇張などは無く、輪郭も自然です。音場は自然な印象で音源に忠実な広さがあります。見通しが良く解像感や分離が高いため窮屈に感じることはありませんが、「Default（Atmosphere）」フィルターを含め、特に前後が少し狭く感じる場合があります。
低域は、ニュートラルバランスで調整されつつ一定のエネルギーと量感を持ちますが、相対的には比較的軽快な印象を受けます。低域についてはステンレス製の「ORIGIN」が特に質感などについて上位モデルらしいアドバンテージを有する要素かも知れません。「TANCHJIM FISSION」の低域も解像感と分離に優れ、かつ滑らかな印象でまとめられていますが、軽量なアルミシェルの影響もあってか、「ORIGIN」よりは多少重量感は控えめで、少し淡泊な印象に感じる可能性があります。それでも重低音は適切な深さがあり、小気味良い印象ながら適切に全体を下支えします。なお、ケーブルプラグを「Type-C」にしてスマートフォンに接続することで「TANCHJIM FISSION」も「TANCHJIM」アプリによる調整が可能になります。同社の低価格モデルでもDSPケーブルモデルではよりV字方向の傾向がアップし、メリハリが強化される印象がありますが、「TANCHJIM FISSION」においても同様の変化があるようで、再生環境により低域については追い込む余地がありそうですね。
■ まとめ
というわけで、「TANCHJIM FISSION」は130ドル以下の価格帯にまとめつつ、最新の第5世代ドライバー（DMT5）や最新技術を搭載し、250ドルオーバーの上位モデル「ORIGIN」に匹敵するようなサウンドを実現した製品でした。また低価格モデルの「4U」で採用されたスイッチ機構を採用し、4種類のモード変更を行える点や、「4U」同様のコンパクトサイズのシェルデザインでさらにCNC加工されたアルミニウム合金を採用することで軽量化を実現するなど正統なアップグレード製品としての完成度の高さも実感しました。私自身は過去に「Oxygen」、「ORIGIN」といったモデルを購入してきた経緯もあり、「TANCHJIM FISSION」で質の高いケーブルでDSPも含めたプラグ交換に対応し、この価格で高い音質を実現していたのには結構驚きを感じました。お買い得かどうかは購入者の価値観によるところも大きいと思いますが、少なくとも「ORIGIN」などが気になっていた方にはかなりオススメできる製品だと感じました。
