
こんにちは。今回は 「HZSOUND GINKGO (銀杏)」です。お手頃価格で質の高いイヤホンを相次いでリリースしている「HZSOUND」からまた魅力的な外観を持った製品が6月27日にリリースされました。10mm PVDセラミックコートドーム+PUサスペンション複合振動板ダイナミックドライバーと9mmピエゾ(PZT、圧電)セラミックドライバーユニットによるデュアルドライバー構成で、さらに3種類のフィルターノズルを備えつつ通常モデルでは50ドル以下を実現。今回も手堅くまとまったイヤホンに仕上がっています。
■ 製品概要と購入方法について
「HZSOUND」は中華イヤホン界隈でも結構老舗に入るブランドで、特に2020年に「Heart Mirror」シリーズをリリース開始してから一気に注目されるブランドに進化しました。現在では非常にコストパフォーマンスに優れた高音質ブランドとしてマニアにはお馴染みになりましたね。
今回の「HZSOUND GINKGO (銀杏)」は10mmサイズのPVDセラミックコート複合振動板ダイナミックドライバーと9mmサイズのマルチレイヤーピエゾセラミック(PZT、圧電)ドライバーによるデュアルドライバー構成のモデルです。光の加減で色彩が変化するカラフルなレジンフェイスを備え、3種類のフィルターノズルなどに対応しつつ50ドル以下の低価格を実現しています。


「HZSOUND GINKGO (銀杏)」の外観は樹脂製ハウジングにCNC加工されたアルミニウム合金製のフェイスカバーを備えています。フェイスプレートはレジンカバーされた樹脂プレートを備え、光の当たり具合で色彩が変化するカラフルなフェイスデザインを採用しています。


「HZSOUND GINKGO (銀杏)」には、2種類のドライバーを搭載。10mmサイズのダイナミックドライバーは振動板にPVD(Physical Vapor Deposition)セラミックコーティングを採用した複合振動板を採用。ドーム部には、PVD法(スパッタリングや真空蒸着などによる表面蒸着法)でナノレベルの極薄かつ軽量のセラミックコーティングが施されています。さらにサスペンションエッジ部にはPU素材を使用した複合振動板を構成しています。さらにDAIKOKU製CCAWボイスコイルを採用しています。
さらに高域および超高域用には9mmサイズのマルチレイヤーピエゾセラミック(PZT、圧電)ドライバーユニットを搭載。40kHz以上の周波数帯域を容易にカバーし、ハイレゾオーディオの基準を満たします。
さらに「HZSOUND GINKGO (銀杏)」は交換可能な3種類のチューニングノズルを備えています。それぞれカラーの異なるシリコンリングが装着されており、バランスモードの「ブラック」(標準)フィルターに対し、中高域を強化する「グリーン」フィルターと、よりニュートラル方向でハーマンターゲットに寄せた「ピンク」フィルターの3種類が付属します。


「HZSOUND GINKGO (銀杏)」の価格は49ドルから、アマゾンでは7,299円(どちらも3.5mmマイク無)です。KEEPHIFIではマイクつき、Type-Cモデルも選択可能です。
Amazon.co.jp(Yinyoo-JP): HZSOUND GINKGO
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして KEEPHIFI より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「HZSOUND GINKGO (銀杏)」のパッケージはラインアートが描かれた化粧カバーに覆われた比較的コンパクトな黒箱タイプ。


パッケージ内容はイヤホン本体、交換ノズルフィルター、ノズルフィルター用予備シリコンリング、予備メッシュパーツ、ケーブル、イヤーピース(2種類、それぞれS/M/Lサイズ)、ケース、説明書など。


本体はプラスチック製でフェイス部分の形状はかつてのKZやTFZなどにも近い馴染みのあるカナル型デザインです。またフェイス部分、特にアルミ製のフレーム部分の意匠は「Softears Volume S」をちょっと意識してるぽい雰囲気もありますね(^^;)。フェイス部分は光の当たり具合でカラフルに変化する貝殻のようなパネルをレジンで覆っており独特の美しさがあります。


ハウジングの装着部分(フロントキャビティ)は耳にフィットしやすい形状に成形されており交換可能なステムノズルは太さがあるものの装着感は良好です。また本体は非常に軽量で耳への収まりも良い印象ですね。


ノズルフィルターは装着済みの標準タイプを含め3種類が付属。ノズル形状自体は同じようですが、メッシュパーツの目の細かさと裏面に貼られたフィルター材の厚みなどで変化があります。


メーカー提供のf値を見ると、「ブラック」(標準)に対し、「グリーン」リングが中高域から高域にかけてのアクセントが強化されており、「ピンク」リングはピークは「ブラック」に近いもののよりフラット方向に調整されていることが伺えますね。この各色のシリコンリングおよびメッシュパーツは予備で1ペアずつ付属するため消耗した際は交換が可能です。


イヤーピースは2種類のタイプが各サイズ付属します。付属品のほかよりフィット感の良いものに交換するもの良いでしょう。私は例によって最終的に「TRN T-Eartips」に交換しました。
ケーブルは銀メッキOFC線ケーブルが付属。弾力のある被膜で覆われた2芯より線タイプで取り回しは良い印象。コネクタ部分は0.78mm 2pin仕様ですがカバー部分の形状はqdc互換タイプで、リケーブルにはqdcタイプのケーブルが使用できます。
■ サウンドインプレッション
「HZSOUND GINKGO (銀杏)」の音質傾向は緩やかなU字方向の弱ドンシャリ。いかにもHZSOUNDらしいミッドセントリックかつニュートラルチューニングのサウンドです。同社というと、かつてKZなどの多ドラ構成の低価格中華ハイブリッドによるメリハリ強めのドンシャリ傾向が主流の時代に、「Heart Mirror」で低価格ながらハーマンターゲット寄りのニュートラルサウンドを持ち込んで大きな話題となった、まさに昨今の中華イヤホンにおけるU字方向、ニュートラル傾向のサウンドが主流となるきっかけとなったブランドとも言えるでしょう。そのエッセンスは今回の「HZSOUND GINKGO (銀杏)」でもしっかり実感することができ、さらに高域および高高域をブーストするピエゾユニットが自然な音色ながら優れた解像感を与えています。
ただしセラミックドームの複合振動板ドライバーとピエゾユニットの組み合わせはしっかり鳴らすためにそれなりの駆動力を必要とします。DAPやアンプのハイゲインモードで再生してもプレーヤーによって特に高域の鮮明さなどの印象はそれなりに違いがある可能性があります。小型のオーディオアダプター等を使用する場合、アナログポータブルアンプを経由するだけでもかなり印象が変わると思います。またケーブルの情報量による変化もそれなりにあるため、特に各音域に対して情報量が多い(=特定の音域への癖が少ない)ケーブルへのリケーブルにより印象が良く感じるケースも多いでしょう。さらにある程度のエージングにより、付属ケーブルでも印象に変化が出る可能性もあります。
上流をしっかり整える、あるいはリケーブルで情報量をアップさせた環境であれば、多くの場合でノズルフィルターは標準の「ブラック」が最も好印象となることが多いでしょう。「ブラック」と「グリーン」は基本的によく似た傾向でニュートラルながら多少V字方向にチューニングさせた印象となります。再生環境によっては「ブラック」フィルターでは女性ボーカルの高音の中高域やハイハットなどの高音が少しウォームに感じる場合があり、このような場合は多少高域をブーストする「グリーン」フィルターの効果をより実感出来るでしょう。
もっとも小型オーディオアダプターなどで駆動力が不足した状態ではピエゾユニットがあまり前面に出ないため、印象としてはどちらのフィルターでも全体的にウォーム寄りで大人しめのサウンドになります。「ピンク」フィルターは説明ではハーマンターゲット寄りのチューニングと記載されていますが、f値記載のとおりの印象で、逆に感じやすい中高域や高域を抑えているため、全体的に少し暗めで伸びきらない感じになる事が多いかもしれません。相性の良い再生環境や曲も一応ありますが、多くの場合は「ブラック」フィルターに固定して上流やケーブルを検討するほうが好みの状態にできそうな印象です。
「HZSOUND GINKGO (銀杏)」の高域は上流をしっかり整える、またはある程度の鳴らし込みを行うことでピエゾユニットによる明瞭で直線的な音を楽しめます。見通しは良く、高高域の透明感も高い印象で優れた解像感で再生されます。付属ケーブルでは高域自体の強さはそこまで強くはありませんが再生環境によってはスッキリとした主張を感じることができるでしょう。ポテンシャルは非常に高くリケーブルなどでの変化も多いため、高域好きの方はより自分好みに追い込む余地があります。
中音域はニュートラルで癖の無い音を鳴らしますが、バランスとしてはU字方向らしく、ややミッドセントリックで凹むことなく再生されます。特に付属ケーブルでは解像感などは一般的な印象ですがバランスが良く自然に感じさせる音作りです。女性ボーカルの高音など中高域はピエゾユニットにより補完されやや硬質で伸びやかに再生されます。中音域はセラミックドームの採用で締まりがあり、かつ過度なメリハリは抑えた詳細で滑らかな音を鳴らします。この辺の派手すぎない音作りは「Heart Mirror」からのHZSOUNDらしい一貫性を感じます。中低域は適度に締まりがあり響きは控えめですが、淡泊に感じる事無く再生されます。音場は付属ケーブルではボーカル域が前傾し特に奥行きが少し狭く感じる場合がありますが、バランスケーブルなどにリケーブルすることで分離感が大幅に向上し、立体的な空間表現を実感しやすくなります。
低域は全体としてニュートラルなバランスのため過度な主張は無いものの締まりの良い音を鳴らします。ミッドベースは響きを抑え直線的な印象ですが輪郭は自然でキレより滑らかさを感じる印象。リケーブルによりバランス接続などによりV字方向に量感が変化するため臨場感が向上します。重低音は深さがあり沈み込みは良好ですが、こちらも強すぎず自然な印象。全体として重量感は控えめのため、地響きのような重い低域を好まれる方向けのサウンドでは無い印象ですね。
■ まとめ
というわけで、「HZSOUND GINKGO (銀杏)」はちょっとだけ似ている外観の製品もありますが魅力的なデザインで、音質面でも同社らしいバランスの良いニュートラルサウンドを実現しておりアンダー50ドル級としては今回も非常に優れた仕上がりになっています。再生環境などの上流によって変化し、場合によってはリケーブルなどが推奨ではあるものの、ピエゾユニットが非常に効果的に機能しており、特に中高域から高域の印象は非常に優れています。そして全体的なドライバーなどのポテンシャルの高さによりリケーブルやイヤーピースの変更、再生環境の違いなどで破綻すること無く追い込む余地が大きく、マニアにとっては結構「遊べる」という意味でも非常に楽しい製品だと思います。お手頃価格ですし、多くのマニアの方にお勧めできるイヤホンだと思いますよ(^^)。









