
こんにちは。今回は 「Kiwi Ears Étude」です。前回に引き続き「Kiwi Ears」による非常に個性的なハイブリッドモデルです。価格帯としては100ドル超くらいとミドル級としては比較的購入しやすい製品ですが、今回は1DD(ベリリウムコート)+3BA(高域2BA+中音域1BA)の比較的トラディショナルな3Way構成とU字傾向のバランスの良いサウンドに、骨伝導の一種で独自技術の振動トランスデューサーである「KVT」を搭載し、非常に個性的なサウンドに仕上げられています。そのため、ややマニア向けではあるものの、非常に興味深いサウンドだと感じました。
■ 製品概要と購入方法について
「Kiwi Ears」は2021年に登場した新しい中華イヤホンのブランドですが、非常に早いペースで新製品を投入しており急速に知名度が高まっていますね。同社のイヤホン製品は豊富なラインナップと質の高いサウンドで多くのマニアから注目を集めています。
「Kiwi Ears Étude」は、10mmサイズのベリリウムコート振動板ダイナミックドライバー(1DD)とミッドレンジ用カスタムBAおよび高域・超高域用のデュアル構成のツィーターBAユニットによる3BA、そして骨伝導タイプの独自振動ユニットであるKiwi Ears独自の振動トランスデューサー「KVT(Kiwi Vibration Transducer)」を搭載するハイブリッドモデルです(構成としては3BA+1DD+1骨伝導)。


独自技術である「KVT」を披露するためにリリースされた最初の搭載モデルが「Kiwi Ears Étude」で、触覚的な振動で中低音の音響を強化するように設計されています。「KVT(Kiwi Vibration Transducer)」は従来のハイブリッドIEM製品に採用される骨伝導ドライバーとは異なり、構造としては骨伝導ワイヤレスヘッドセットに近い、通電することで高張力スプリングに固定されたN52ネオジム磁石により伝導プレートを物理的に振動させる仕組みを採用。「KVT」により触覚的な振動で搭載するドライバーユニットを補完し、低中域に深みを与え全体的な音響体験を向上させます。


ドライバーには低域用の10mm ベリリウムコート振動板ダイナミックドライバーと3基のカスタム・バランスド・アーマチュア(BA)ドライバーを搭載。低域用ダイナミックドライバーは深みのある響きと立体的な音像を獲得し、低音域を生き生きと再現し、パワフルで歪みのない音を再生する高効率の中音域用BAはボーカルや楽器の豊かで正確なサウンドを実現。さらにデュアル構成の高域・超高域用ツィーターBAは音楽の繊細な微細なディテールや空気感のある質感を余すことなく再現します。この各ドライバーに「KVT」を加え、最適なチューニングを行うことで全周波数帯域にわたり自然で統一感のあるサウンドを生み出し、スムーズなトランジションと卓越した明瞭性を実現します。


「Kiwi Ears Étude」の価格は119ドル、アマゾンでは18,880円です。
AliExpress(Linsoul Audio Store): Kiwi Ears Étude ※セール価格105.91ドル
Linsoul(linsoul.com): Kiwi Ears Étude
Amazon.co.jp(LINSOUL-JP): Kiwi Ears Étude
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Linsoul(linsoul.com): Kiwi Ears Étude
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免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Linsoul より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「Kiwi Ears Septet」のパッケージは最近のモデルと一貫性のあるデザインで統一されています。
パッケージサイズは「Airoso」などと同様ですね。


パッケージ内容は本体、ケーブル、イヤーピースは白色、グレー、ブラックの3種類のタイプでそれぞれS/M/Lサイズ、ハードケース、説明書。


本体は3Dプリントによる樹脂製ハウジングと金属製フェイスプレート。「KVT」ユニットを含むマルチドライバー構成によりシェルサイズはやや大きめで結構厚みのある形状ですが、振動を耳に伝達させる仕様のため装着部(フロントキャビティ)は耳にフィットしやすいデザインで成形されています。


そのため装着感は良好で軽量なシェルデザインもありしっかりホールドできる印象。ただ厚みのある形状のため少し耳から露出部は多くなります。イヤーピースは3種類のタイプが付属しますが、付属品のほかよりフィット感が高い製品に交換するのも良いでしょう。私は例によって最終的に「TRN T-Eartips」に交換しています。


付属ケーブルは中華2pinタイプの銅線ケーブルで、「Airoso」をはじめ「Canta」「Quartet」「Forteza」など100ドル前後のモデルで多く付属するケーブルと同様の線材のようです。被膜は柔らかく取り回しは良い印象。コネクタは一般的な2pin仕様のため手頃な銀メッキ線などへのリケーブルを検討するのも良いでしょう。
■ サウンドインプレッション
「Kiwi Ears Étude」の音質傾向はニュートラル方向の緩やかなU字で、やや中低域に厚みを持つ、最近のイヤホンにおける「定番のリスニングバランス」に仕上げられています。具体的にはHBB氏の公開している測定値で同氏のターゲットカーブ(ハーマンターゲットより低域に少し厚みを持たせたバランス)に非常に近いところを推移している、というと、中華イヤホンを多く聴かれている方であれば分かりやすいかも知れません。にもかかわらず実際に聴いた印象として「Kiwi Ears Étude」が他とは明らかに異なる個性を放っているのは、やはり独自技術の「KVT」による部分が大きいでしょう。
「KVT」はいっぽうでは多くの骨伝導ユニット搭載IEMと同様に、低域に適度な「深さ」と「エネルギー」を補完します。ベリリウムドライバーによる過度な響きを抑えレスポンス良くインパクトを伝える低音にf値では表現されない深みと響きを直接伝達し、より没入感を高めます。
しかし、このユニットが他(の骨伝導ユニット)と大きく異なるのは中音域の印象で、前述のようにU字傾向でボーカル域を前傾させつつ本来は癖の無い印象で再生される中音域に独特の響きと色彩を与えます。
実際は明瞭で適度な透明感のある見通しの良い印象の音なのですが、振動による伝達で倍音のような響きと厚みを与え、演奏は煌めきつつ広がりを持つような鮮やかさと光沢感を与えます。より原音に忠実なサウンドを好まれる方にはこの独特の音色はネガティブに捉えるケースも考えられますが(海外レビューを見ると「トンネルの音」や「尾ひれが付くよう」みたいな表現をされている方もいらっしゃいますね)、リスニング的な楽しさという意味で他には無い聴き応えがあり、好感される方も結構多いのではと感じました。
「Kiwi Ears Étude」の高域は伸びのある印象で見通しが良く、適度に煌めきを感じる明瞭な音で鳴ります。印象としては明るすぎず暗すぎず自然な印象で、過度に強調されることはありませんが、同時に不足を感じることもほぼ無いでしょう。2基のツィーターBAによるディテールの表現は詳細でシンバル音なども明瞭に鳴る印象。同時に寒色すぎず僅かに温かみもある自然な輪郭と解像感があります。また歯擦音などの刺激はコントロールされており、聴きやすく調整されています。
中音域は凹むとなくU字傾向のニュートラルなバランスで再生されます。男女ボーカルは僅かに前傾しますが、近すぎず比較的存在感のある音で再生されます。カスタムBAによる中音域は歪みを抑え解像感と分離の良さを維持しつつもドライになりすぎず、自然な音像と明瞭感を持っています。また演奏との分離も適切で混雑すること無く自然に定位します。
しかし、前述の通り「Kiwi Ears Étude」の最大の特徴は「KVT」による、ある意味での「脚色」または「演出」で、音源の強弱に対して独特の響きによる「厚み」と「鮮やかさ」を加えます。このアプローチはポップスやロック、アニソンなどのボーカル曲との相性が良く、これらの音数が多い曲や低音が強めに演出された音源ではよりボーカル域が前傾し、厚みと色彩を音像に加えることでより聴き応えが増します。いっぽうでボーカル曲でもアコースティックなサウンドやライブ音源では逆に演奏側が強調されるため、ボーカルはすこし下がった印象になります。おそらく「KVT」ユニット自体が中低域付近にピークを持つ振動スピーカーのため、定位や音域に関係なく、より音圧の高い要素をブーストしているためと思われます。このようなアプローチでは本来、まとまりに欠けた乱雑なサウンドになりがちですが、基礎的なバランスを保ちつつ、適度にエッセンスを加えるアプローチにチューニングされている点が「KVT」の独自性であり「Kiwi Ears Étude」の特徴といえるのではと思います。
しかし、前述の通り「Kiwi Ears Étude」の最大の特徴は「KVT」による、ある意味での「脚色」または「演出」で、音源の強弱に対して独特の響きによる「厚み」と「鮮やかさ」を加えます。このアプローチはポップスやロック、アニソンなどのボーカル曲との相性が良く、これらの音数が多い曲や低音が強めに演出された音源ではよりボーカル域が前傾し、厚みと色彩を音像に加えることでより聴き応えが増します。いっぽうでボーカル曲でもアコースティックなサウンドやライブ音源では逆に演奏側が強調されるため、ボーカルはすこし下がった印象になります。おそらく「KVT」ユニット自体が中低域付近にピークを持つ振動スピーカーのため、定位や音域に関係なく、より音圧の高い要素をブーストしているためと思われます。このようなアプローチでは本来、まとまりに欠けた乱雑なサウンドになりがちですが、基礎的なバランスを保ちつつ、適度にエッセンスを加えるアプローチにチューニングされている点が「KVT」の独自性であり「Kiwi Ears Étude」の特徴といえるのではと思います。低域はニュートラルバランスながらベリリウムコート振動板ダイナミックドライバーの低音を「KVT」が適度に保管することで、十分なパワーと厚みを持ち、非常に質の高い音を実現しています。「KVT」の補完により実際の量感より低域は存在感があり、ミッドベースは太く、重低音は重さと深さがあります。単純に骨伝導ユニットを搭載した他のIEM製品と比較しても「Kiwi Ears Étude」の低域の質感は良好で、低域好きの方にも好感される印象といえるでしょう。
ベリリウムコート振動板ダイナミックドライバーは主に重低音にフォーカスして調整されており、非常に深く沈み地響きのような重量感がありますが、同時にベリリウムの特徴を活かし、解像感とキレの良さがあります。ミッドベースはダイナミックドライバーでは直線的な印象で締まり良く鳴るため、中高域とは綺麗に分離し明瞭感があります。ここで「KVT」が中低域に対して適度なブーストを与えることで低域の存在感がアップし、音源に豊かさと迫力を与えます。優れた臨場感によりライブ音源などは非常に楽しく感じることができるでしょう。■ まとめ
というわけで、「Kiwi Ears Étude」はイマドキの定番のサウンドで調整しつつ、「KVT」という独自ユニットを組み込むことで他には無いサウンドを実現した、非常に興味深いモデルでした。正直このイヤホンをどう感じるかは、ここまでで繰り返し触れてきましたが、やはり「中音域」の評価次第、という部分はあります。とはいえ、低域についてはベリリウムドライバーとの組み合わせは完全に成功しており、ニュートラルバランスながらリスニング性を一段格上げしているような質感があります。今後のアプローチで「中音域」についても「KVT」の使い方についてさらなる「正解」が見つかれば、さらに驚くような製品が登場するかもしれませんね。ちなみに、Kiwi Earsは「Kiwi Ears Étude」と比較的似たサウンドバランスでチューニングしつつ、より癖の無い印象で音質を高めた「Aether」(平面ドライバー)や「Astral」(1DD+6BA)といった製品も上位モデルとしてリリースしているので、購入しやすい価格帯のバリエーションモデルとして、このような個性的な製品をラインナップするのは個人的には十分に「あり」だと感じました。結構なマニア向けイヤホンだとは思いますが、興味のある方は購入してみるのも良いと思いますよ。









