TOPPING DX5II

こんにちは。今回は 「TOPPING DX5II」です。いわゆる中華USB-DACやアンプの分野でトップブランドのひとつとしてマニアからお馴染みの「TOPPING」のお手頃価格の据置き型USB-DAC/ヘッドホンアンプ製品の最新モデルです。個人的には5年間ほど使用してきたかつてのベストセラー機「DX7 Pro」からの比較も気になるところ。先日よりサポート体制に定評のあるMUSIN社が国内代理店となり安心感も増したことで新規/リプレース問わず一気に注目されている製品でもありますね。

■ 製品概要と購入方法について

いわゆる「中華アンプ」という分野でオーディオマニアに周知され始めた頃からの代表的ブランドのひとつが「TOPPING」で、主に据置きの中華アンプやUSB-DAC製品で定評がありますね。個人的にも100ドル以下の低価格モデルからある程度の上位シリーズまで、これまでに10種類以上は同社製品を購入していたりと結構馴染みのある存在です。
先日MUSIN社が「TOPPING」およびDTM向けに新たに立ち上げられた「TOPPING Professional」ブランドの国内代理店となることが発表され、同社がサポートする最初の「TOPPING」製品としてリリースされたのが今回の「TOPPING DX5II」です。

TOPPING DX5IITOPPING DX5II」は「TOPPING」ブランドの中で「USB-DAC/AMP複合モデル」となる「DX」ラインでミドルグレードに位置づけられる据置き型USB-DAC/ヘッドホンアンプ製品。ただ現時点では他の「DX」ラインの製品は前世代モデルのため、新世代シリーズの最初のモデル、という存在でもあります。
ちなみに、「TOPPING DX5II」の前身となる「DX5」は同社のUSB-DAC製品のアンプモジュール部でNFCAが搭載される世代で新たに設定されたグレードで、その前の世代の「DX7s」(ES9038Q2M×2搭載)の実質的な後継になります(なお「DX7s」はES9038PRO搭載の「DX7 Pro」にアップグレードされ、後継の「DX7 Pro+」に移行しました)。そのため、5年くらい前に「DX7s」や「DX7 Pro」を購入されたユーザーのリプレース先としても「TOPPING DX5II」は気になる存在といえるでしょう(実はわたしもそのひとりです)。

TOPPING DX5IITOPPING DX5II」は、コンパクトなボディにDACとしてESS製「ES9039Q2M」をLRデュアル構成で採用し、フルバランスの4チャンネルアンプを搭載します。
DAC回路にはより優れたSNR特性でポテンシャルをフルに引き出すため、自社開発のI/V変換モジュールを採用。卓越した回路設計により驚異的な低歪みと低ノイズを実現し、優れたサウンドクオリティを実現しています。
またアンプ部には「DX5」を含む前世代機より採用されたTOPPING独自の「NFCA(Nested Feedback Composite Amplifer)」の技術を継承しつつ新たに生まれ変わった新世代アーキテクチャ「X-Hybrid AMP」回路を採用。
ディスクリート入力/出力、オペアンプの3ステージで構成され、超低歪率、優れたダイナミックレンジとともに消費電力と発熱を効果的に制御し、電源効率を大幅に向上させています。

また「TOPPING DX5II」は2インチスクリーンと3つの物理ボタン、操作ノブによりシンプルかつスピーディな「Aurora UI」インターフェースを搭載。メインカラーは9色のバリエーションがあり、「再生ステータス」「FFT(高速フーリエ変換)」「VUメーター」の画面を任意に表示可能です。
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また新開発の10バンドパラメトリックイコライザー(PEQ)機能は、独自開発したアジャストメントアルゴリズムと「TOPPING Tune」PC用ソフトウェアにより、周波数・Gain・帯域幅を細かく設定可能です。

TOPPING DX5II」の入出力インターフェースは6.35mmシングルエンドと4.4mmバランスヘッドホン出力、RCA、XLRラインアウト出力、入力はUSB、SPDIF(光、COAX)、Bluetooth、に対応します。出力は600mW×2@16Ω、6400mW×2@32Ωの高出力と1.8uVrmsの低ノイズフロアを備え、32bit/768kHz PCM、DSD512のハイレゾ再生に対応します。
またワイヤレス機能はQualcomm社QCC5125チップを搭載しBluetooth 5.1のレシーバー機能に対応。LDACやaptX Adaptiveといった高音質コーデックにも対応します。
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TOPPING DX5II」の国内販売価格は49,500円(税込)。カラーバリエーションは「ブラック」または「ホワイト」が選択可能です。
Amazon.co.jp(MUSIN直営店): TOPPING DX5II


免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして MUSIN様 より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。


■ パッケージ構成、製品の外観および内容について

TOPPING DX5II」のパッケージはシンプルはブラックのボックス。従来製品を購入されている方には馴染みのあるシンプルさですね。
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製品内容は、本体、Bluetoothアンテナ、USBケーブル、リモコン、6.35mm変換アダプタ、電源ケーブル、保証書。
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製品サイズは190×131×44mm、954gと電源内蔵タイプの据置き型USB-DAC/AMP製品としてはかなりコンパクトにまとめられています。正面からのデザインが楕円形だった前シリーズに比べ、よりシンプルでスクエアなボックスデザインとなった点も、様々なオーディオ環境に合せやすく良いと思います。
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またBluetooth機能は結構前の世代から搭載されていましたが、今回国内代理店から購入できることで毎回技適は大丈夫かという心配をしなくて良いのも個人的には非常に有り難いと思ったりします。
インターフェースについてはフルバランス仕様で4.4mmヘッドホン出力とXLRラインアウトに対応。いっぽうで上位モデルで搭載されるIIS(I2S)入力は非搭載となります。まあIISは実質的に一部デバイス専用ですし、同社の機器連携としては「DX7 Pro+」で搭載された「12V Trigger」が搭載されたため、相当機能を選択しているとも解釈できますね。

また「TOPPING DX5II」では専用のPEQ制御ソフトウェア「TOPPING Tune」が利用できます。現在はWindows用のみのリリースで、MUSIN社のサポートページで、最新ファームウェア、Windows用ASIOドライバーと併せてダウンロードが可能です。
なお、レビュー掲載時にちょうど最新ファームウェアの公開がありましたが、ファームウェアの更新はDFUモードで本体を起動なおしてファームウェアファイルをコピーするだけの簡単操作でした。
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「TOPPING Tune」ソフトウエアはインストール後に「TOPPING DX5II」を接続して起動すると自動で認識し、詳細なEQ設定及び保存が可能になります。また画面下部で機器のステータスを確認することもできます。EQ設定のエクスポート/インポートも可能なため、PC等を変更時に設定を継承させるほか、別のユーザーが作成したEQ設定を取り込んで利用することも可能です。詳細なノウハウを持っている方にとっても、これから色々試してみたい方にも標準でソフトウェアが用意されているのは有り難いですね。なお「TOPPING Tune」はソフトウェアEQとして機能し、本体がもつEQ機能(DeviceEQ)とは独立しているようです。


■ インプレッション

TOPPING DX5IIまずは「TOPPING DX5II」の操作性について。こちらは新たに2インチのカラースクリーンを本体に搭載したことで劇的に視認性および操作性が向上しました。画面の表示が良くても音質には確かに関係はないのですが、デスクトップオーディオとしてモニター下などに配置した場合に、再生中のステータスが分かりやすく表示できているかは、やはり結構重要だなと思います。
実際のところ中華オーディオで競合するSMSLは数世代前からカラースクリーンを搭載していたため、その点で従来の「DX5」や「DX7 Pro+」が若干寂しい感じだったのは否めませんでした。「TOPPING DX5II」でこの点が大きく改善された点は好感できるポイントでしょう。

いっぽうで、メニュー階層の表示やボタン/ノブの操作性は従来機種を踏襲しており、既存のTOPPING製品ユーザーでも戸惑うこと無く設定できるのも良い配慮だと思います。
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なお、本体メニュー側で搭載されるイコライザ「DeviceEQ」についても「TOPPING Tune」ソフトウェアのプリセットと同じ「Bass1」「Bass2」「Airy」「Warm」「Dynamic」の各モードが設定可能です。再生側をMacなどWindows以外のシステムを使用する場合や、SPDIF接続の場合もある程度はメニューで対応出来そうですね。
実際の試聴はMacおよびWindows環境で、どちらも「Audirvana」でFLAC、DSD音源を使用して聴いてみました。出力は複数のヘッドホンおよびイヤホン、ラインアウトはRCAおよびXLR経由でそれぞれ確認しています。
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また従来機の比較として所有している「DX7 Pro」を同環境で使用して比較してみました。なおXMOS系のドライバーを使用するUSB-DACの場合のお約束で、Windows環境では同じメーカーのUSB-DACを複数接続する場合は、メーカーごとにタスクバーのコントロールパネルで使用デバイスを選択します。
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聴いてみた印象としてまず印象的だったのはノイズ特性の高さでしょう。高感度のCIEM等を接続しても透明感が非常に高く、静寂さのなかで見通しの良い音をしっかり鳴らしてくれる印象。癖の無いニュートラルな音色ですが多少ドライで輪郭ははっきりしたサウンドです。ESS系らしい傾向ですが、過度なエッジ感などは無く、空気の膜を取ってより鮮明なフォーカスで描写しているような、軽やかさを持った透明感のある音、という感じですね。個人的には、もう少し厚みや深さみたいなものも欲しいかなと感じますが、後方XLRのラインアウトから別のアンプを接続したり、EQを調整したりなど、音色を調整していく上での「素材」と考えるとこれくらい素直な音のほうが扱いやすそう、とも感じました。

TOPPING DX5IIそして新たに搭載された「X-Hybrid AMP」がハイパワーながら自然な印象で正直「安心」しました。というのも前世代モデルで幅広く採用されてるアンプ回路の「NFCA」は従来のオペアンプチップ(例えば前前世代の「DX7 Pro」は交換可能なLME49720がAMP用×2、LPF用×2搭載)と比較して低歪み・高出力を実現している点が特徴でしたが、結構パワー押しな傾向が強く個人的にはちょっと扱いづらい印象でした。「TOPPING DX5II」が搭載する「X-Hybrid AMP」は「NFCA」から進化したモジュールですが、スペック上のハイパワーは維持しつつも小ゲインでもスムーズな出力を持っており、また音量調整もより細かく刻まれるような印象です。そのため、「NFCA」回路を搭載した前世代機および「DX7 Pro」のような前前世代機と比較しても、特に小音量で扱いやすく、ヘッドホンよりイヤホンをメインで使用する方にも使いやすいアンプに進化したと感じます。

TOPPING DX5IIまた鳴らしにくいヘッドホン等についても十分な駆動力を提供します。具体的には「Sennheiser HD800」(XLR 4pinバランス)でハイゲインで音量-30~-35dBくらいで、手持ちの「DX7 Pro」とほぼ同じボリュームで必要な音量を確保出来ました。
両者の比較ではDACチップの違いもあって「DX7 Pro」のほうが若干密度感や滑らかさを感じさせますが、解像感や精緻さは両者遜色無く、透明感はむしろ「TOPPING DX5II」のほうが高く感じました。
アンダー5万円クラスのUSB-DAC/AMPでこれだけ鳴らせれば十分に優れていると言えるでしょう。


■ まとめ

というわけで「TOPPING DX5II」ですが、もともとコストパフォーマンスに優れ、音質面、性能面でも定評のある「TOPPING」の新しいモデルと言うことで個人的には安心感しかないわけですが(笑)、今回はデザインをスクエアなボックスデザインに一新し(カッコイイ!)、ハイパワーでお馴染みアンプ回路も進化し(使いやすくなった!)、そして安心の国内サポートが得られる(実はこれが一番ありがたい!)といいことずくめで、さらに価格も税込み5万円以下と非常に嬉しい内容になっています(^^)。

TOPPING DX5IIベーススペックとしては「DX7s」を踏襲していた「DX5」からの進化は非常に大きく、仕様面では「DX7 Pro」や「DX7 Pro+」などの上位モデルから受け継いだ機能やカラーパネルによる操作性の向上など、必要な機能をコンパクトに凝縮しているのも嬉しい点でしょう。
音質面ではDACチップに「ES9039Q2M」を2基搭載し、「DX7s」(ES9038Q2M×2)、「DX5」(ES9068AS×2)より解像感などは向上しており、上位モデルに匹敵するレベルに近づいています。また新たに搭載された「X-Hybrid AMP」アンプは既存の「NFCA」の低歪み、ハイパワーを踏襲しつつ、印象としてはよりノイズ特性と透明感を高め、自然なゲインカーブを持っている点が好印象でした。
デスクトップ環境における入門機としても、様々な利用環境でのオーディオアダプターとしても実用性は高く、幅広いユーザーにお勧めできるUSB-DAC/アンプ製品だと感じました。