
こんにちは。今回は 「ZiiGaat Horizon」です。1DD+2BA+2Planar構成の300ドル超級のミドルグレードハイブリッドモデルです。中音域に「Crescent」同様のカスタムチューニングされたKnowles「ED-30262-163」BAを2基搭載しつつ、高域に2基の平面駆動ドライバーを搭載することでより解像感と透明感をアップさせた明瞭系のリスニングサウンドを実現しています。
■ 製品概要と購入方法について
「ZiiGaat」は10年以上にわたってOEM/ODMで製品を提供してきた中国の製造メーカーが立ち上げた独自ブランドで、主にLinsoul系セラーで販売が行われています。ミドルグレード以上のラインナップで精力的に新モデルをリリースしておりマニアからの注目度も非常に高いブランドのひとつです。
今回の「ZiiGaat Horizon」は、1DD+2BA+2Planar(平面駆動)のトライブリッド構成を採用したモデル。自然で滑らかなトーンバランスに、空気感と見通しを与える高音域の拡張を狙ったチューニングが特徴です。


「ZiiGaat Horizon」のドライバーは低域用に10mm バイオダイナミックドライバーが1基、Knowles製の「ED-30262-163」バランスド・アーマチュア(BA)ドライバーが2基、そしてカスタムされたデュアル仕様の平面駆動ドライバーを組み合わせた 1DD+2BA+2Planar構成を採用。
デュアルカスタム平面ドライバーは、20~36kHz にわたる線形応答で高音を拡張。10mm バイオダイナミックドライバーが深く魅力的な低音を、2基のKnowles製BAは滑らかな質感の中音域を生み出します。そして高音域は、リアリズムを高め、自然な音色の一貫性を保つために、綿密にバランス調整されています。


「ZiiGaat Horizon」のシェルは3Dプリントによる医療グレードのレジンを採用。ハンドメイドによる手流しのフェイスプレートによる美しい外観を備えます。
ケーブルは導体に銀メッキ無酸素銅線(SPC OFC)を使用した4芯撚り線ケーブルを採用。0.78mm 2pin仕様で、交換可能な3.5mmおよび4.4mmプラグが付属します。さらに2種類の液体シリコンタイプおよびフォームタイプのイヤピースが同梱されます。


「ZiiGaat Horizon」の価格は329ドル、アマゾンでは48,480円で販売されています。
Linsoul(linsoul.com):ZiiGaat Horizon
AliExpress(Linsoul Audio Store): ZiiGaat Horizon
Amazon.co.jp(LINSOUL-JP): ZiiGaat Horizon
AliExpress(Linsoul Audio Store): ZiiGaat Horizon
Amazon.co.jp(LINSOUL-JP): ZiiGaat Horizon
免責事項:
本レビューではレビューサンプルとして Linsoul より製品を提供いただきました。機会を提供してくださったことに感謝します。ただし本レビューに対して金銭的やりとりは一切無く、レビュー内容が他の手段で影響されることはありません。以下の記載内容はすべて私自身の感想によるものとなります。
■ パッケージ構成、製品の外観および内容について
「ZiiGaat Horizon」のパッケージは最近の大型ケースが同梱されるモデルと同様のタイプのボックスになりました。最近の「Odyssey 2」などの同様のサイズでこちらはブルーを基調としたデザインとなっています。


パッケージ内容はイヤホン本体、ケーブル、3.5mm/4.4mm交換プラグ、イヤピース(黒と透明の2種類の液体シリコンタイプがそれぞれS/M/Lサイズ、ウレタンタイプが1ペア)、大型のケース、説明書、保証書。


「ZiiGaat Horizon」の本体は「Crescent」や「Luna」と同様に樹脂製でステムノズルは金属製。側面にメッシュパーツが埋め込まれたベント(空気孔)があります。フェイスパネルにはハンドメイドによって装飾されたブルー系でマーブルの意匠で落ち着いた高級感がありますね。


シェルサイズはやや大きめですがステムノズル部のリーチがあるため装着感はまずまずです。「ZiiGaat Horizon」のシェルサイズも「Crescent」や「Luna」とほぼ同じサイズのようです。


付属品も充実しており、大型のレザーケースとイヤーピースは形状の異なる黒色と透明の2種類の液体シリコンタイプがそれぞれS/M/Lサイズ付属します。最初から液体シリコンタイプのみ(いちおうウレタンタイプも1ペア付属)としているのも分かりやすくて良いですね。


「ZiiGaat Horizon」のケーブルも「Crescent」と同様で太さのある黒い樹脂被膜の4芯タイプ。太さにあわせて多少重くなっていますが被膜は弾力があり取り回しは良い印象です。プラグは中華2pinタイプで、一般的な2pin仕様のケーブルへのリケーブルも容易です。
■ サウンドインプレッション
「ZiiGaat Horizon」の音質傾向は最近のZiiGaatの傾向と踏襲したニュートラルな印象で明るく伸びのある高域と締まりのある低域が特徴的なサウンド。バランスとしてはU字寄りですね。Knowles ED系の2基のフルレンジBAによる空気感のある微細な表現力を持つ中音域と2基の平面駆動ドライバーにより拡張され、透明度と明るさを増した高域、控えめに持ち上げた重低音を中心にタイトでスピードと解像感の高い低域により詳細なディテールを見通しの良い軽快なサウンドで奏でる印象です。
仕様としてはインピーダンス24Ω、感度102dB/mW相当と比較的鳴らしやすく、多くのDAPやオーディオアダプター製品でも十分駆動可能な印象。逆にパワーのある環境で鳴らしても歪まず、バランス出力により向上する分離感も自然です。最近のZiiGaat製品で共通することですが付属イヤーピースが液体シリコンタイプおよびウレタンフォーム製とどちらも柔らか目のもので調整されているため、少し硬質のイヤピに交換するとより高域が若干シャープに感じやすい傾向もあります。この辺は好みで使い分けて見るのも良いでしょう。
「ZiiGaat Horizon」の高域は明るく伸びのある音を鳴らします。2基の平面駆動ドライバーにより超高域が拡張され、より透明感のある鳴り方が印象的です。量的にはニュートラルバランスを維持しており、Knowles製EDのBAらしいスッキリした高域を平面ドライバーが補完しつつ、5kHz付近の刺さりやすい帯域はコントロールされています。適度な煌めきがありやや硬質ですが液体シリコンイヤピによる柔らかさが適度なバランスでスッキリして高い解像感を維持しつつ自然な印象も感じさせます。中音域はU字寄りのニュートラルなバランスで凹むことなく癖の無い印象で再生されます。採用されている2基の「ED-30262-163」はKnowles製のフルレンジ仕様BAで、同社ED系の定番「ED-29689」より大型で内部の振動部も大きいことが特徴。また他のED系BAより比較的インピーダンスが高く、ドライバー間のマッチングが得やすいため、ハイブリッド構成でより滑らかでシングルドライバーのような繋がりの良いサウンドを得るのに効果的とされています。
「ZiiGaat Horizon」では同様にデュアル仕様の「ED-30262-163」を採用しつつも全体としては低域が強力にブーストされた「Crescent」と比較して、中音域の存在感が強く、豊かで温かみのあるボーカル域の再生などに特徴が活かされています。ボーカル域は若干前傾して定位し、女性ボーカルの高音などには適度なアクセントあり透明感のある抜けの良い印象で再生されます。男性ボーカルは低域がタイトなこともあり若干引き気味に感じる場合もありますが見通しの良さから存在感を維持しています。解像度は高くより密度感のある「Crescent」より「ZiiGaat Horizon」のほうが見通しが良くよりハッキリとした輪郭による音像表現が特徴的です。
演奏との分離も良くクリーンで、音場は自然な広がりに加え、上下方向には抜けの良さを感じます。過渡応答の早さから、より細かい微小音も混雑すること無く整理されている印象で、音数が多く複雑な編成でも窮屈さはありません。インストゥルメンタルも強調感はないものの忠実性の高い印象でしっかり表現してくれる印象です。
低域はバランスとしては重低音を中心に若干ブーストされているものの全体としてはニュートラルバランスで量感よりタイトな締まりの良さやキレの良さを重視した印象。パワフルで雰囲気のある低域を特徴とした「Crescent」に対して2基の平面ドライバーにより高域の透明感をアップした「ZiiGaat Horizon」の印象的な違いと言えるでしょう。
ミッドベースは量的にはやや控えめな印象で中高域との分離は良好。直線的で締まりのあるサウンドでスピード感やキレの良さを感じさせます。重低音は重量感は一般的ですが解像度が高く沈み込みも深い印象。音数の多いハードロック系の音源やEDMなども籠もること無くスッキリと再生します。バランス的には明るく明瞭なサウンドやボーカル域の表現を求める方向けで、低音の量感や臨場感が欲しい方にはあまり向かない印象です。
演奏との分離も良くクリーンで、音場は自然な広がりに加え、上下方向には抜けの良さを感じます。過渡応答の早さから、より細かい微小音も混雑すること無く整理されている印象で、音数が多く複雑な編成でも窮屈さはありません。インストゥルメンタルも強調感はないものの忠実性の高い印象でしっかり表現してくれる印象です。
低域はバランスとしては重低音を中心に若干ブーストされているものの全体としてはニュートラルバランスで量感よりタイトな締まりの良さやキレの良さを重視した印象。パワフルで雰囲気のある低域を特徴とした「Crescent」に対して2基の平面ドライバーにより高域の透明感をアップした「ZiiGaat Horizon」の印象的な違いと言えるでしょう。ミッドベースは量的にはやや控えめな印象で中高域との分離は良好。直線的で締まりのあるサウンドでスピード感やキレの良さを感じさせます。重低音は重量感は一般的ですが解像度が高く沈み込みも深い印象。音数の多いハードロック系の音源やEDMなども籠もること無くスッキリと再生します。バランス的には明るく明瞭なサウンドやボーカル域の表現を求める方向けで、低音の量感や臨場感が欲しい方にはあまり向かない印象です。
■ まとめ
というわけで、「ZiiGaat Horizon」は最近のZiiGaatのミッドレンジ製品の中でも2基の平面駆動ドライバーによる明るく開放的な中高域から高域の印象により、ボーカル域を中心とした見通しの良さの情報量の豊かさが印象的なイヤホンでした。2種類のダイナミックドライバーを等圧配置し低域を補完した「Crescent」とはニュートラルバランスながら対照的なサウンドで、よりクリーンで分離感の良いサウンドを求める方には、「ZiiGaat Horizon」は良い選択肢となるでしょう。
印象的なのはどちらも中音域に2基の同社チューニングの「ED-30262-163」を採用している点で、音色にある種アナログ的な滑らかさと自然さをもっており、「Crescent」では2DDの自然な調和を得ているのに対し、「ZiiGaat Horizon」では高域及び低域のスッキリして明瞭感を強調した音作りに対して、しっかりと解像感や分離の良さを提供しつつ過度に寒色過ぎず自然なリスニングサウンドに仕上げている「同じだけど効果が違う」使い方に感心しました。製造メーカーによるアプローチの上手さを感じられ、今回も質の高いミドルグレードイヤホンに仕上がっていると思いました。







